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若者というのは、いつでも流行を生み出す存在である。それはファッションや若者言葉にとどまらず、LINEやSNSなどに打ち込む文字でも言えることだ。かつて大ブームを巻き起こした「ギャル文字」のように、今もまた若者の間で新たな流行が生まれている。
1月31日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、文章の最後に三点リーダー(…)を付けてしまうクセについて紹介。最近の若者は「ですが…」「だよね…」などと、「…」で文章を終わらせる人が増えているという。番組ではそうした傾向について、「三点リーダー症候群」という言葉があることを紹介。また芸能人にも同様のクセをもつ人はいるようで、『ダウンタウン』の松本人志は「これね、中居正広がよくやるやつ」と語っていた。
実際に三点リーダーを多用する人の意見を見てみると、《余韻を伝えるため》《怒りをマイルドに表現》《推しの尊さを伝えるため》など、さまざまな理由があるようだ。中には《断言するときつい印象になってしまうから》と、気遣いを目的とする人も見受けられた。三点リーダーという同じ記号を使っていても、異なる思いが込められている可能性があるようだ。
そもそも三点リーダーとは、言外の意味を仄めかしたり、言いづらいことを曖昧に表現したりする記号。「はっきりと言わずに伝える」ために効果的であり、そういった意味では若者の使い方もあながち間違っていないように感じる。
しかし問題なのは、曖昧さを利用して「察してほしい」「責任を持ちたくない」といった思いで使う人がいることだろう。その魂胆に気づいたとき、もちろん良い気はしない。また、はっきりと意見を言わないことから、相手の真意が見えずコミュニケーションが難しくなるという弊害もある。そうした背景から、「三点リーダー症候群」などと揶揄されているのではないだろうか。
三点リーダーの多用が許されるケースも
日常会話では三点リーダーの使用に関して、さまざまな弊害がつきまとう。では小説などで使用される場合は、どんなルールがあるのだろうか?
小説の場合でも、三点リーダーを目にする機会はあまり多くない。もちろん使用してもいいのだが、多用するのはよくないという風潮があるのだ。しかし例外もあり、たとえば清涼院流水や西尾維新といった作家を生んだ「新本格ミステリ」というジャンルでは、作中で三点リーダーが多用されることがある。
また新本格ムーブメントに影響を与えた、夢野久作の『ドグラ・マグラ』も三点リーダーが溢れる作品。同作は10年以上の歳月をかけて書かれた小説で、「読破した者は必ず一度精神に異常が現れる」と言われる奇書だ。非常に高い評価を得ているが、作中のそこかしこに三点リーダーが散りばめられている。もはや「三点リーダー中毒」と言っても過言ではない。
三点リーダーの多用をよしとしない文学の世界で、なぜ「ドグラ・マグラ」は評価されているのか。それは、頻繁に登場する三点リーダーが、物語の不気味さや狂気さをうまく表現しているからだろう。世界観の構築に役立っているからこそ、評価が高いのだ。
使い方によっては抜群の表現力をもたらす三点リーダー。便利さゆえについ多用してしまうが、日常で使いこなすのはいささか難しい。ただでさえ顔が見えない文字でのやりとりを、さらに困難にする可能性がある。SNSやリモートワークが台頭する今こそ、文章表現についてよく考えてみるべきなのかもしれない…。
文=いずみ
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