『鬼滅の刃』は『ガロ』から生まれた!? 吾峠呼世晴が本当に影響を受けたマンガとは

 

『鬼滅の刃』1巻(吾峠呼世晴/集英社)

『鬼滅の刃』の大ヒットによって、一躍注目度が高まった漫画家・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)。エンタメ業界に携わる者であれば、誰もが吾峠のバックグラウンドに興味を抱いているはずだ。一体どんな作品に影響を受け、いかにして「鬼滅の刃」を生み出したのか…。本稿ではその答えをお教えしよう。

吾峠に影響を与えた作品として、まっさきに思い浮かぶのは荒木飛呂彦の『ジョジョの奇妙な冒険』。主人公が独自の呼吸法によって能力を発動させるという点で、「鬼滅の刃」は「ジョジョ」1部・2部の影響下にあると言える。また3部のボス・ディオが人の血を吸う〝吸血鬼〟であり、太陽の光に弱いという点も、鬼舞辻無惨を連想せずにはいられない。

2016年10月にツイキャスで配信された『スクジャンホームルーム』では、担当編集の口から「吾峠が影響を受けた作品ベスト3」が語られる一幕も。そこでは当然「ジョジョ」がランクインしていた他、『NARUTO -ナルト-』や『BLEACH』といったタイトルも挙がっていた。なお「BLEACH」については熱量が高いファンなのか、打ち合わせ中によく護廷十三隊の話をしていたという。

その他、作中に出てくるギャグについては、空知英秋による『銀魂』の影響が指摘されている。実際にジャンプ本誌で「銀魂」が連載終了した際、吾峠は巻末コメントにて「ジャンプに漫画を送るきっかけは銀魂でした。感謝」とねぎらいの言葉を送っていた。

真に影響を受けた作品とは

しかしこれまで作品名が挙がったものは、いずれもジャンプマンガの人気作。多少なり“リップサービス”の面があるのではないだろうか。以下では別の角度から、吾峠に影響を与えた作品を考察していこう。

まず1つ目は、星野桂によるダークファンタジーマンガ『D.Gray-man』。同作は2004年から「ジャンプ」本誌で連載がスタートし、後に『ジャンプスクエア』に移籍した経緯をもつ。「BLEACH」などと連載期間がかぶっているため、吾峠が作品に触れていたことは間違いないだろう。

「D.Gray-man」には人の魂を縛って活動する「AKUMA」という敵が登場し、主人公・アレンはAKUMAをせん滅する組織に所属している。しかしアレンはAKUMAにされている魂に同情するタイプであり、教団の人間とは衝突しがち。そう、まるで鬼に同情する炭治郎のように…。また家族をAKUMA(鬼)にされてしまう点や、仮面をつけた師匠が登場する点も、両作品に共通する要素だ。

さらに「鬼滅の刃」以前の短編作品を読むと、吾峠の異なる一面が見えてくる。ジャンプ新人賞に入賞した『過狩り狩り』は、人を喰らう鬼とそれを退治する剣士という、「鬼滅の刃」と同様の設定。しかしその作風は、演出の方法や表情の描き方に至るまでジャンプらしからぬ雰囲気を漂わせていた。マンガ通の間では、『ねじ式』のつげ義春やアングラマンガ雑誌『ガロ』の影響も指摘されている。

2019年には「過狩り狩り」を含む短編を収録した『吾峠呼世晴短編集』が刊行されているが、この本は〝鬼滅以前〟の吾峠ワールドを堪能できる一冊。人間を凌駕する化け物、この世のことわりを外れた呪い、不幸な生い立ち…アングラ作家としての力量がいかんなく発揮されている。ちなみにあとがきでは、虫に変化する兄弟が出てくる作品について『妖怪人間ベム』の影響が語られていた。

人間でありながら鬼となった禰豆子のように、吾峠はジャンプのメジャー作品とアングラマンガの血を共に受け継いでいる。「鬼滅の刃」が化け物級の面白さとなったのも、当然と言えるだろう。

文=猿田虫彦
写真=まいじつエンタ

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