『PUI PUI モルカー』監督のテーマは人間の闇? 代表作『マイリトルゴート』の魅力

(C)PIXTA

モルモットと車が合体した〝モルカー〟の活躍を描くフェルトアニメ『PUI PUI モルカー』(テレビ東京系)。同作は今年1月に放映が始まると、たちまちSNS上で流行し、今や社会現象クラスのヒット作となっている。その熱気は海を越え、台湾では地上波で週32回放送されるほどの人気を博しているという。

「モルカー」はほのぼのとした雰囲気ながら、作中でさまざまな〝闇〟が垣間見えるのが特徴。監督の見里朝希は、以前からそうした作風を磨き上げていたようだ。同氏は「モルカー」以前に、『マイリトルゴート』というアニメを作っていたのはご存じだろうか。

「マイリトルゴート」ってどんな作品?

見里監督は1992年生まれの若きクリエイターで、女優として活躍する見里瑞穂を姉にもつ。「武蔵野美術大学」の造形学部を卒業すると、「東京藝術大学大学院」映像研究科アニメーション専攻に進学。『ニャッキ!』で有名なアニメーション作家・伊藤有壱に指導を受け、当時から頭角を現していた。

「マイリトルゴート」は、そんな見里が大学の卒業制作として手掛けたパペットアニメ。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2019」のジャパン部門優秀賞や、「パリ国際ファンタスティック映画祭」のグランプリ受賞など、華々しい功績を残している。

実際に作品を観ればわかるのだが、「マイリトルゴート」は大きなギャップを秘めた作品だ。テーマを一言でいうと、男親から息子への「性的虐待」。フェルトでできた愛くるしいキャラクターと、シビアな題材によって、すさまじい落差が生じている…。

ストーリーは、オオカミの腹をさばいて子ヤギを救出した母ヤギが、消化されてしまった長男の代わりに、人間の男の子をさらってくるところから始まる。男の子は死んだ長男の代わりとして森の奥の小屋に監禁されるのだが、彼を取り囲む子ヤギたちの外見は結構グロテスク。オオカミの胃酸のせいで皮膚は爛れ、恐ろしい形相になりはてている。

しかし男の子にとって真に恐ろしい相手は、実の父親だった。その人物は小屋までやってきて、男の子に対してさまざまな暴力をふるう──。

見里監督は、なぜ父から息子への性的虐待をテーマに選んだのか。その理由としては、性別に関係なく、弱者は搾取されうると警鐘を鳴らしたかったのではないかと考えられる。世間には父親から娘への性的虐待を取り上げたフィクションがある一方、父親から息子への性的虐待はいまだにタブー視されており、「ありえないこと」としてスルーされがち。見里監督はあえてこの挑戦的な題材を選ぶことで、表面化しにくい社会の闇を抉り出したのかもしれない。