『シン・エヴァンゲリオン』を公開初日に観たオタクのレビュー【完全ネタバレ】

『新世紀エヴァンゲリオン』1巻(漫画:貞本義行、原作:カラー/KADOKAWA/角川書店)

エヴァンゲリオンが、終わった。2012年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の公開から約8年。さらに言えば、いわゆる「旧劇」と呼ばれるかつての劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』から約14年。度重なる公開延期を経て、ついに3月8日より待望のシリーズ完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(以下、シンエヴァ)の公開が始まった。

今回は「シンエヴァ」公開初日に劇場に赴いた筆者が、その場で目にした会場の熱狂と顛末について、いちエヴァファンとして素直な感想を綴っていくことにする。

※『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の内容に触れています

最初に筆者のエヴァへの理解度を説明すると、学生時代に新劇場版がスタートし、後にTVシリーズや旧劇場版を観直した、いわゆる新劇からのファンにあたる人間だ。熱狂的な信者というわけではないが、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の衝撃的な展開に動揺し、その後に控える「シンエヴァ」の公開を何年も楽しみに待ってきた日本中に大勢いるエヴァファンの1人であることは間違いない。

さて待ちに待った公開初日。新宿の大手劇場に赴くと、客席はほぼ満席、パンフレット目当てに長蛇の列ができるほどの盛況ぶりを見せていた。しかし意外だったのは、そうした盛り上がりからは考えられないほどの客層の偏りだ。自分と同じような新劇からエヴァンゲリオンに触れたであろう20代~30代前半までのファンと、TVシリーズから追っているような40代の古参ファンの2パターンに大きく分かれ、それ以外の年齢層がほぼ皆無という状況だった。

公開初日の平日夕方ごろという時間帯の影響もあるだろうが、その客層の偏りを見て、「シンエヴァ」は非常に閉じたサークルの中で受容されている映画なのかもしれない──そんな印象を受けた。この壮大な内輪ノリ感は、果たして映画本編にどう作用するのか。期待と心配を胸に秘めたまま、「シンエヴァ」の物語が幕を開ける。

現実としての前編、虚構としての後編

「現実対虚構」これは映画『シン・ゴジラ』のキャッチフレーズだ。いわずもがな、庵野秀明監督はエヴァと同じく「シン・ゴジラ」の総監督を務めていた。この現実と虚構の天秤をどう動かすのかという点が、庵野監督にとっての通底したテーマの一つと言える。

では、「シンエヴァ」においてその天秤はどうなったか。結論を言うと、現実と虚構の天秤は完全に現実に傾き、「アニメなんて見てないで現実を生きろ」というメッセージで終わったと言っていいだろう。

これを聞いて、昔からのファンは「何だ、結局旧劇と同じオチなのか」と思うかもしれない。「旧劇」、つまり1997年に上映された『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は、アニメの中に逃避するオタクを真っ向から否定し、「気持ち悪い」と言い切って終劇となった。

では、「シンエヴァ」は「旧劇」で描き出したメッセージを刷新できなかったのか? それは、否だ。結論としては似ていても、「シンエヴァ」と「旧劇」では2つの圧倒的に異なる点が存在する。そしてその相異こそが、エヴァンゲリオンシリーズの中でも今作しか持ち得ない強烈なカタルシスと救いを生んでいると言ってもいいだろう。ここで、本題に入る前にざっくりと「シンエヴァ」の物語を説明しよう。

「シンエヴァ」は大きく分けて前編と後編に分かれた二部構成となっており、前編では「Q」のラストシーンに引き続き、放浪を始めたシンジたちのその後に待っていた生活が描かれる。シンジが引き起こしたニアサードインパクトによる崩壊後の世界では、戦後まもなくの日本を思わせるノスタルジックな風景が広がっていた。劇中では復興を目指し、貧しくもたくましく生きる人々の日常とエヴァのパイロットたちの交流が丹念に描かれていく。そこには兵器たるエヴァンゲリオンの姿はなく、小津安二郎の『東京物語』のような雰囲気でスローに物語が進んでいった。

対して後編は人類補完計画を進めるゲンドウと、それを食い止めようとするミサト率いるWILLEとのぶつかり合い、兵器と兵器によるド派手で血生臭いドンパチの応酬となる。エヴァンゲリオンの新型機体や新フォームが大盤振る舞いのように登場したかと思えば、幾何学的でスタイリッシュなデザインの謎物体が四方八方を飛び回り、ロボットの戦闘シーンという枠を超えたドラッギーな映像が絶え間なく流れ込んでくる。

かと思えば、お馴染みの精神世界への言及あり、メタ表現あり、特撮のオマージュから突拍子もないギャグ表現まで闇鍋のような内容が次から次に展開。それと共に、ブラックボックスだったキャラクター同士の関係性やしがらみ、裏設定などが一気に解き明かされていく。今までファンが気になっていた未解決要素が次々と解決を見せ、最終的に「シンエヴァ」はエヴァンゲリオンそのものからの脱却を図ることに成功する。具体的にどう解決するのかは、ぜひ映画館に行って体験してもらいたい。