『チェンソーマン』藤本タツキは“引用の悪魔”!? キャラの魅力を紐解く映画たち

『チェンソーマン』11巻(藤本タツキ/集英社)

現在もっとも勢いのある漫画の1つとして、誰もが『チェンソーマン』の名前を挙げる。同作は謎めいた世界観や予想不可能なストーリー展開によって、熱狂的なファンを生み出してきた。作中には「チェンソーの悪魔」の力をもつ主人公・デンジを始めとして、個性豊かなキャラクターたちが登場する―。

というのは、いかにもありきたりな作品紹介。実はその本当の面白さは、古今東西の映画を元にした〝引用〟にこそある。作者・藤本タツキの正体が「引用の悪魔」だったとしても、何もおかしくはない。今回はそんな同作がオマージュしてきた映画作品を、「キャラクター」という観点から読み解いていこう。

その1:公安の仲間たちのクールな元ネタ

そもそもデンジの力である「チェンソーの悪魔」という設定は、伝説的なB級ホラー映画『悪魔のいけにえ』に登場するレザーフェイスのオマージュ。両者はともにチェンソーを武器にして戦うキャラクターだ。

もちろん、ここまでは多くの人が気付くことだが、実は両者の共通点は他にもある。デンジがデビルハンター・岸辺と戦闘訓練を行った際、たびたび手にしていたハンマーも、レザーフェイスのサブ武器なのだ。さらにレザーフェイスは狂気に取り憑かれた恐ろしい男だが、小学生並の知能しか持たないという設定。デンジの恐ろしい戦闘スタイルと子どものような純粋さのギャップも、元ネタの怪物をリスペクトしたものだろう。

また、作中屈指の人気を誇る「血の悪魔」パワーは、コーエン兄弟監督の『ビッグ・リボウスキ』に登場するウォルターというキャラが元ネタ。これは作者自身が『このマンガがすごい!2021』で受けたインタビュー内で明かしている。

ウォルターは口にする言葉のほとんどが、勝手なこじつけやでまかせばかり。そのうえ短気で、何かあるとすぐに銃を取り出して脅してくるという厄介な性格だ。しかしどこか憎めない部分があり、主人公の相棒としていざという時は活躍してくれる…。ここからデンジとパワーの関係性を思い浮かべない方が難しい。

ちなみにデビルハンターの公安メンバーは、いずれも黒ネクタイに黒スーツという出で立ちだが、こちらも元ネタがある。作品名はクエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』。スタイリッシュなのにコミカルで、さまざまな作品のオマージュに満ちている…。そんなタランティーノ監督のスタイルは、藤本に大きな影響を与えていそうだ。