ひぐらしにFate、東京喰種まで… 海外ラッパーが日本アニメをサンプリングする理由

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近年、フリースタイルバトルやラップのCMなどで、お茶の間に浸透しつつあるHip Hop文化。しかし、国内ならまだしも海外のラッパーに関しては、まだまだ縁遠い存在かもしれない。海外のラッパーと聞いて頭に浮かぶのは、ひと昔前のゴールドネックレスを大量に身につけたイカツイ男たちが酒や女に溺れる姿だろう。しかし、そんな物騒なイメージとは裏腹に、最近では海外のラッパーが日本のアニメソングを引用がブームとなっている。

たとえば元ギャングにして、アメリカを代表するラッパーの1人であるスヌープ・ドッグ。彼はウィズ・カリファと共に製作した『No Social Media』という曲で、アニメ『ひぐらしのなく頃に』のBGMをそのままサンプリングしている。

そもそも「ひぐらし」は、ギャング出身のラッパーと縁が深い。昨年に20歳の若さで亡くなった、同じく元ギャングの人気ラッパー、ポップ・スモークは『Welcome to the Party』に「ひぐらし」のBGMを使用していた。

また、映画『8 Mile』によって日本でも有名となったエミネムにも、実はアニメをサンプリングした曲が。2018年に発表した『Good Guy』という曲にて、『東京喰種トーキョーグール』の劇中歌を丸々使用したことでファンを驚かせていた。

「東京喰種」は海外でも人気の高い作品で、その影響力は他のラッパーにも及ぶ。イギリス出身の若手人気ラッパー・スカーロードは、「東京喰種」の主人公である金木研をリスペクトしていることで有名。彼はメディアに登場する際は金木研よろしく、チャックが付いたマスクを装着しており、その姿はステージ衣装というよりコスプレに近いものとなっている。

なぜラッパーたちがアニメにハマるのか…

厳密にはラッパーではないものの、Hip Hopの要素を融合させた新時代R&Bシンガーとして有名なザ・ウィークエンドも取り上げておきたい。ザ・ウィークエンドは過去にグラミー賞を受賞し、あの米津玄師も尊敬していると公言する世界的シンガー。しかし、かつて作成した『Coming Down』という曲には、なんと『Fate/Stay Night』のセイバーと士郎のキスシーンの会話音声が丸ごとサンプリングされているのだ。クールで緊張感のある曲のまっただ中で、突然流れ出す情感たっぷりのセイバーと士郎のラブラブボイス…。ミスマッチな組み合わせをどう解釈するべきか分からないが、ぜひ一度聞いてほしい曲と言える。

またザ・ウィークエンドは代表曲である『The Hills』でも、『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒・ラミエルの鳴き声を使用。奇妙かつマニアックなサンプリングが多いことから、アニメオタクのファンをたびたび喜ばせている。

一見、水と油のようにも見えるHip Hopと日本アニメの関係は、なぜ生まれたのだろうか? 実はその秘密は、海外の「ケーブルテレビ」文化に隠されているのだとか。ラッパーには貧しい地域で生まれ育った人が多く、そうした地域は治安が悪いため、親から外を出歩くことを禁止されているケースが多い。

そこで子どもが家にいる間に退屈しないように、ケーブルテレビを見せるのだが、そこで日本のアニメに触れる機会に恵まれるというワケだ。ケーブルテレビの意外な影響によって、成功者となってからもオタクな一面を隠さないラッパーが増加傾向にあるという。

海外では現在、Hip Hopが最もメインストリームとされる音楽ジャンルとなっている。クールジャパンと銘打ってアニメの輸出をしようと国策が掲げられているが、実は本当にアニメを世界中に浸透させているのは海外のラッパーたちなのかもしれない。

文=富岳良

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