実はテキトー!?『シン・エヴァンゲリオン』の専門用語を紐解いたら意外な結果に…

『新世紀エヴァンゲリオン』1巻(漫画:貞本義行、原作:カラー/KADOKAWA/角川書店)

今年3月に公開され、ついに興行収入77億円を記録した『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。「エヴァンゲリオン」シリーズといえば、劇中に登場する難解で衒学的な用語が作品の大きな魅力だ。しかし同作に関しては、専門用語の決め方が案外テキトーだとファンの間で話題になっている。

最初にファンからツッコまれたのが、ヴンダーがネルフ本部を強襲する作戦名が「ヤマト作戦」だったこと。庵野秀明監督が愛好する『宇宙戦艦ヤマト』が元ネタとなっているのだが、露骨すぎる引用だったため、劇場公開後には《いくらなんでも直球すぎる》とツッコミが相次ぐ結果となった。

また、エヴァ同士がロンギヌスの槍で戦うシーンで「ゴルゴダオブジェクト」というキーアイテムが登場する。こちらは『新約聖書』において、イエス・キリストがロンギヌスの槍で処刑された場所である「ゴルゴダの丘」が元ネタ。聖書からの引用は「エヴァ」の常套手段ではあったが、ロンギヌスの槍で闘う→ゴルゴダの丘→ゴルゴダオブジェクトというシンプルな連想ゲームによって名付けられた疑いがある。『ウルトラマンA』にも「ゴルゴダ星」が出てきたので、そこからの引用もあるのかもしれない。

さらには、劇中序盤に登場する「第3村」付近をうろつく首なしエヴァの名前はなんと「ハイカイ」(徘徊)。また、市井の人々を支援するヴィレの下部組織である「クレーディト」は、ドイツ語で「信用」や「融資」といった意味だ。支援組織に付ける名称としては、これもなかなかに捻りがない。

極めつけは劇中に登場する槍の名前である「ガイウス」、「カシウス」、「ロンギヌス」。「ロンギヌス」には聞き覚えがあっても、「ガイウス」や「カシウス」は聞き覚えがないという方がほとんどではないだろうか。それもそのはず、この2つに関しては聖書と関係ない古代ローマの軍人の名前が元ネタだからである。その軍人の名前とは、ガイウス・カッシウス・ロンギヌス。「ブルータス、お前もか」で有名なカエサルを暗殺した人々の1人だとされている。

何故いきなり古代ローマの軍人が元ネタになったのか、その真相は不明だ。しかしファンの間では「ロンギヌスの槍以外に、あと2つ槍の名前を決めなければいけない→たまたま名前にロンギヌスと入っているローマ軍人がいた→ちょうど3つの名前が連なっているのでそこから拝借しよう」と安易な思考を辿ったのでは、とまことしやかに噂されている…。

なぜ聖書からの引用が多いのか?

「エヴァンゲリオン」シリーズは聖書からの引用に満ちているが、そこには意外な理由があるという。大きな原因となったのは、『攻殻機動隊』や『パトレイバー』で有名な押井守監督の影響。「エヴァ」を企画した当時、庵野がそれらしい固有名詞を考えるのに何か参考はないかと押井に尋ねたところ、聖書関連の参考文献を大量に貸したことがあったらしい。お互いに衒学的な要素の強い作品の監督ではあるが、意外なつながりがあったようだ。

かねてよりエヴァは「深い意味がありそうでない」と言われていたが、「シン・エヴァ」のネーミングセンスはもはや親父ギャグの域に達してしまっている。しかし、それでもなお謎解きや考察を行うファンは多い。中身がないことが分かっていても、あえてそのノリに全力で乗っかってこそのエヴァ観賞なのだろう。アニメファンに旧劇場版で冷や水をかけた庵野監督の気持ちも、なんとなく理解できるような気がする…。

文=富岳良
写真=まいじつエンタ
■『新世紀エヴァンゲリオン』1巻(漫画:貞本義行、原作:カラー/KADOKAWA/角川書店)

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