少女漫画に名作短編ナシ!? 小学館の短編アンソロジーに抗議の声が噴出

少女漫画に名作短編ナシ!? 小学館の短編アンソロジーに抗議の声が噴出

少女漫画に名作短編ナシ!? 小学館の短編アンソロジーに抗議の声が噴出 (C)PIXTA

6月30日に小学館から『日本短編漫画傑作集』の刊行が始まるのだが、なぜかそのラインナップに少女漫画の短編が選ばれておらず物議を醸している。女性作家の作品にも、日本漫画史を語る上で外せない名作があるはずなのだが…。

この問題を指摘したのは、『バクちゃん』などで知られる漫画家・増村十七。同氏は自身のツイッターで、《日本短編漫画傑作集!! 楽しみ&買う&それはそれとして選者が全員男性って意味わからん!!!》と訴えた。また《他の分野はさておいても、マンガってジャンルにおいて、女性の選者の目線なしでは、「日本」の傑作集を謳うものとして、かなり漏れがあるのでは》と問題提起。男性漫画家ばかりが参加したアンソロジーに、疑問を投げかけている。

『日本短編漫画傑作集』は全6巻の刊行が予定されており、公式サイトでは現在3巻までの商品概要が公開済み。しかしそこに並んでいる作家名は、たしかに手塚治虫や水木しげる、ちばてつやなど男性作家ばかり。そもそも選者がいしかわじゅん、江口寿史、呉智英、中野晴行、村上知彦、山上たつひこと男性ばかりなので、選定の基準が偏っていることは否めない。

『日本短編漫画傑作集』というタイトルが間違っていた?

そんな中、関係者と思わしき吉田保という人物が、増村氏へのリプライにて《今回は、少年、青年漫画なんです。少女漫画は入りません》と説明。しかし、かえって火に油を注ぐような形になってしまい、一般の漫画ファンから《それなら『日本短編少年・青年漫画傑作集』ってタイトルにすればよくない?》などと突っ込まれている。

このような問題を投げかけると、〝フェミニズム案件〟などと過剰に反発する向きもあるが、今回の騒動は漫画好きなら誰もが異論を唱える問題だろう。というのも実際に少女漫画界は多くの才能を輩出しており、日本漫画史を振り返るならば無視するのは到底不可能。とくに大島弓子や萩尾望都、山岸凉子、竹宮惠子といったいわゆる「花の24年組」は、人間の内面の複雑さを描くことで「漫画を文学にした」と言われているほどだ。

また増村氏も《現在読める70年代くらいの女性作家のマンガって、少数の売れっ子作品以外はほぼ短編集》と指摘しているが、たしかに当時の少女漫画界では短編の佳作が数多く生み出されていた。『ベルサイユのばら』や『エースをねらえ!』などの長編が圧倒的な知名度を誇るが、この時代に親しまれた数々の短編も後世に大きな影響を及ぼしている。〝短編漫画傑作集〟を名乗るならば、ピックアップせざるを得ないはずだ。

もちろん漫画論の枠組みを超えた先には「女性作家や少女漫画というジャンルの軽視」という、より根深い問題も潜んでいる。とはいえこの件はあくまで氷山の一角であり、たまたま偏見が明らかになったに過ぎない。今後、漫画史の〝歪み〟を正していくことはできるのだろうか…。

文=大上賢一

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