「ジャンプ+」読切『16歳の身体地図』話題沸騰! 漫画表現が新たなフェーズに突入

「ジャンプ+」読切『16歳の身体地図』話題沸騰! 漫画表現が新たなフェーズに突入

「ジャンプ+」読切『16歳の身体地図』話題沸騰! 漫画表現が新たなフェーズに突入 (C)PIXTA

日本の出版業界において、大きな存在感を放っている「少年漫画」というジャンル。ケタ違いの売上や知名度を誇っており、今や国民的娯楽と言っても過言ではない。5月31日、そんな少年漫画の暗部を暴くような作品が漫画アプリ『ジャンプ+』上で公開され、大きな波紋を呼んでいる。

その作品とは、モリエサトシによる短編読み切り『16歳の身体地図』。とある高校を舞台として、バレーボールに打ち込む女子高生たちの青春を描いた物語だ。こうして説明するとスポコン的な設定に見えるが、作中では〝初潮〟という出来事が話を複雑にしていく。

物語は重い生理に悩まされる主人公・キリカの姿からスタート。キリカはかつてバレーのプレイヤーとして有名だったが、小学生の時に初潮を迎え、身長が伸びなくなったようだ。体育の時間に高身長バレー部員・みとと出会ったキリカは、あらためて〝身体〟というままならない存在と向き合っていく──。

踏み込んだテーマを扱いながら、少年漫画らしい熱い展開が描かれているのが同作の凄み。作品に触れた読者からは、《読み終わった瞬間、ポロッと涙出た…》《ジャンプだし男の子の話かと思ったら全然違って鳥肌立った。男女問わず10代に読んで欲しい》《めちゃくちゃ刺さった。最後は涙が…。こんな漫画がジャンプラに載る時代になったんだね》《自分の体すらままならないことに絶望してきた人なら刺さると思う。私はなんか過去に遡って救われた気もして泣きそうになった》と絶賛の声が巻き起こっている。

少年漫画が避けてきた「思春期の身体」

少年漫画において、「スポコンもの」は花形の存在。その作中で描かれるのは、未成熟な少年がスポーツに打ち込み、心身ともに伸び伸びと成長していく物語だ。少年たちの「身体」は、無限の可能性に開かれた真っ白なキャンバスのようにまぶしい。

しかし穿った見方をすると、「16歳の身体地図」はそんな少年漫画の欺瞞を突き付けている。キリカたちにとって、生理という壁を乗り越えることなくして成長はありえない。「身体」が自分の成長を制限するものとして描き出されているのだ。これはスポーツに打ち込む際の、男性と女性の非対称的な条件なのかもしれない。しかし少年漫画において、〝自由な身体〟という神話が築かれてきたことは確かだろう。

少年漫画が抑圧してきたテーマが暴かれたことで、反発心を抱く人も少なくない。一部からは、《いい作品だとは思うけど、少女漫画で書くべきもので、「少年ジャンプ」にあるべきではないと思うオレは老害のおっさんなのかな》《ジャンプっぽいけど、ジャンプじゃない。さすがに見境なさすぎではなかろうか》といった声もあがっている。しかしこうして紛糾することでこそ、少年漫画というジャンルの枠組みはより豊かになっていくはずだ。

ちなみに同作の担当編集者は、『チェンソーマン』や『地獄楽』などの革新的な作品を手掛けてきた林士平。才能ある作家たちの筆によって、少年漫画の〝ニューウェーブ〟はすでに芽吹き始めている。

文=猿田虫彦

【画像】

Kostiantyn Postumitenko / PIXTA

【あわせて読みたい】