『ONE PIECE』がインフレしないのはナゼ? 画期的すぎる「懸賞金」システム

『ONE PIECE』がインフレしないのはナゼ? 画期的すぎる「懸賞金」システム

『ONE PIECE』99巻(尾田栄一郎/集英社)

バトル漫画では、連載が長期化するほどにパワーインフレが起きるもの。物語の序盤では強者だったキャラクターが、後に格落ちしてしまう…などの矛盾が必ずと言っていいほど生まれる。しかし『週刊少年ジャンプ』の大人気漫画『ONE PIECE』では、インフレを回避するためにとある画期的なシステムが導入されているのだ。

そのシステムこそが、「ONE PIECE」以外ではほとんど見る機会がない「懸賞金」。作中には凶悪な海賊たちが登場するが、彼らは賞金首として懸賞金をかけられている。たとえば主人公のルフィは3000万ベリーから始まり、現在は15億ベリーに到達しており、大物になるほどグレードアップしていく仕組みだ。

普通の発想なら、懸賞金の数値を「戦闘力」を反映したものとして描いてしまうだろう。しかし、ここが「ONE PIECE」のユニークなところ。懸賞金は世界政府に対する危険度を示す指標ともなっているため、必ずしも戦闘力に直結していない。むしろ戦闘力が高くても、制御しやすい海賊なら懸賞金が低く抑えられるという寸法だ。

なぜ「懸賞金」システムは画期的なのか?

こうした懸賞金の設定には、パワーインフレを抑える効果がある。その具体例が、元王下七武海のクロコダイルだ。「アラバスタ編」のボスとして立ちはだかった際、クロコダイルの懸賞金は8000万ベリー。当時のルフィは懸賞金3000万ベリーだったため、読者は圧倒的に格上の敵という印象を抱いたことだろう。

しかしその後、ルフィをはじめとしたキャラの懸賞金が跳ね上がっていくため、8000万は相対的にかなり低い数値となってしまう。たとえば同じ元七武海メンバーでいうと、ゲッコー・モリアは3億2000万、バーソロミュー・くまは2億9600万といった額。クロコダイルは「インペルダウン編」で再登場したものの、懸賞金の額だけみるとあきらかに格落ちしている。

ここでカギを握るのが、懸賞金は強さの指標ではないという点。そして、「王下七武海」に加入すると懸賞金が上がらなくなるという仕組みだ。つまりクロコダイルは8000万から上に行けなかったのではなく、むしろそんな早い段階から世界の脅威と認められ、「王下七武海」に勧誘されたものと考えられる。この場合、逆に懸賞金が低ければ低いほど〝早熟の天才〟だったことが読み取れるのだ。

そんな巧妙な設定が練られた「ONE PIECE」だが、実は一瞬だけミスを犯しそうになったことも。それは「ウォーターセブン編」で突如として導入された、キャラクターの戦闘力を数値化する「道力」という設定だ。

「道力」はロブ・ルッチが4000道力、クマドリなら810道力などと、強さがわかりやすいというメリットが存在する。しかし一度強さを数値化してしまえば、あらゆるキャラクターの格付けが完了し、その後覆すことができなくなってしまう。実際に「道力」の設定は一瞬で存在しなかったことになり、多くのファンを困惑させたが、賢明な判断だったと言わざるを得ない。

強さが未知数だからこそ、戦闘のワクワク感が駆り立てられるもの。小物だったはずのキャラクターが真価を発揮し、読者を驚かせる…という展開を期待できるのは「ONE PIECE」ならではの魅力ではないだろうか。

文=「まいじつエンタ」編集部
写真=まいじつエンタ
■『ONE PIECE』99巻(尾田栄一郎/集英社)

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