“ポスト宮崎駿”の筆頭? 新海誠も嫉妬するアニメ監督・岡田麿里という存在

“ポスト宮崎駿”の筆頭? 新海誠も嫉妬するアニメ監督・岡田麿里という存在

“ポスト宮崎駿”の筆頭? 新海誠も嫉妬するアニメ監督・岡田麿里という存在 (C)PIXTA

新海誠や細田守など、中堅世代のアニメ監督が次々と台頭している昨今。その地位はいまだ確定しておらず、新作が発表されるたびに「どちらが上なのか」という議論が巻き起こっている。しかしそんな中で、間違いなくビッグネームになることが確定している作家がいることをご存知だろうか。その人物とは、埼玉県秩父出身の女性監督・岡田麿里だ。

岡田のキャリアは、もともと脚本家としてスタートした。その仕事は2000年前後から始まっていたのだが、アニメファンたちが岡田の名前を意識するようになったのは2007年ごろのことだと思われる。この年、岡田はシリーズ構成まで手掛けた『こどものじかん』や『スケッチブック ~full color’s~』といった作品で頭角を現しつつあった。

そして翌年には、代表作となる『true tears』や『とらドラ!』のシリーズ構成・脚本を担当。リアルな男女の恋心や、視聴者の心をゆさぶるセリフによって高い評価を得た。さらに2011年には、温泉旅館で働く女子高生を主人公としたオリジナルアニメ『花咲くいろは』を生み出し、いわば〝岡田ブランド〟を築き上げる。

華々しい経歴だが、ここまでは優れた脚本家としての仕事に過ぎない。大きな転機となったのは、原作を手掛けた『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』だ。同作は秩父出身である岡田のパーソナルな部分を注ぎ込んだ力作であり、商業的にも大ヒットを記録。明石家さんまや『バナナマン』の設楽統といった芸能人にも広まり、劇場版や実写ドラマまで制作された。

こうして岡田がブレークを果たしたのは、他のアニメ脚本家とは一線を画したセンスがあったからに他ならない。彼女の作品には、それまでのアニメ作品にありがちなテンプレ的な美少女キャラではなく、生々しいほどにリアルな人物たちが登場する。女性キャラの生理といった二次元のタブーを積極的に描き出し、生きた人間のようなセリフを喋らせること…。それこそが岡田の作劇テクニックと言えるだろう。

「アニメ監督」としての才能の開花

その後も岡田は才能を遺憾なく発揮し、『凪のあすから』や『心が叫びたがってるんだ。』などの傑作を生み出したが、2018年にふたたび転機が訪れる。長編劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』にて、初めてアニメ監督というポジションを務めたのだ。

同作は、数百年の寿命をもつ「イオルフの民」の少女・マキアを主人公とした物語。切ない出会いと別れの物語でありながら、岡田がこれまで執着してきた「成長」や「母」というテーマに正面から取り組んだ作品となっている。初監督作品にもかかわらず3つの国際的な映画祭で賞を獲得した上、新海誠もツイッター上で《初監督としてこれだけの質を突きつけられると、嫉妬もするし焦りもしてしまいます》と絶賛していた。

ここでアニメ業界の現状を振り返ってみると、現在は『スタジオジブリ』の宮崎駿を誰が継承するのかという問題が取り沙汰されている。新海や細田、庵野秀明といった中堅監督たちが〝ポスト宮崎駿〟の候補として名前を挙げられている状況だ。しかし実は、岡田こそがその座にふさわしい監督なのではないだろうか?

たとえば細田はこれまで『時をかける少女』や『サマーウォーズ』などの監督を務め、高い評価を得てきた。しかし2012年の『おおかみこどもの雨と雪』から脚本も自身で担当するようになると、ストーリーテリングの拙さが問題視されるように。演出家出身であるため、絵作りと脚本のクオリティーに乖離が生じてしまったのだ。この問題は細田だけでなく、他の〝ポスト宮崎駿〟候補にも当てはまることであり、日本のアニメ監督が陥るもっとも根本的な矛盾と言えるだろう。

ところが脚本を本業にしてきた岡田には、そのような弱点はない。絵作りに関しても、有能なアニメーターたちがサポートしていることで、決して欠点にはなっていない。今後経験を積むことで、演出と脚本を兼ね備えた唯一無二のアニメ監督が誕生するのではないか。

岡田は次回作として、新作劇場アニメ『アリスとテレスのまぼろし工場』の監督を務めることが明らかとなっている。同作は人気アニメ制作会社『MAPPA』が制作を担当し、「さよ朝」と同じメインスタッフが集結する予定だ。この作品の完成をもって、アニメ業界の未来を担う監督が誕生することを期待したい。

文=「まいじつエンタ」編集部

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Kostiantyn Postumitenko / PIXTA

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