『チェンソーマン』クズ主人公・デンジはなぜ人気? ジャンプ伝統の“本能型キャラ”の魅力

『チェンソーマン』クズ主人公・デンジはなぜ人気? ジャンプ伝統の“本能型キャラ”の魅力

『チェンソーマン』11巻(藤本タツキ/集英社)

少年漫画の主人公といえば、漠然と「正義感に溢れ自己犠牲をいとわない」というイメージを抱く人は多いだろう。だが、最近そんなイメージを完全に覆すような主人公が熱狂的な人気を博している。彼の名は、藤本タツキの大ヒット漫画『チェンソーマン』に登場するデンジだ。

同作は「悪魔」と呼ばれる異形の怪物がはびこる世界で、それを駆除するデビルハンターたちの戦いを描いた作品。主人公のデンジはひょんなことからチェンソーの悪魔を身に宿し、公安のデビルハンターとして働くことになる。

しかしその人となりは、かなり型破りだ。そもそもデビルハンターとして働く動機も、上司のマキマとお近づきになりたいという不純なもの。戦闘中に人助けをすることもあるが、女性は無条件で助け、男性はどうでもいいような扱いばかり。正義感によって行動することはなく、つねに自身の欲望のために動いている。

まとめてみるといかにもクズな主人公だが、読者からの人気は熱狂的と言っていいほどに高い。なぜこのような現象が起こっているのか。実際にファンからあがっているのは、《あの境遇を見たらクズとは言えない》《頭悪くなるのも仕方ない生い立ちだし、嫌いになれない》といった声だ。

デンジはデビルハンターになる前、父親が残した多額の借金を返済するために、極貧生活を強いられていた。そして家族も恋人もいない中、ヤクザの下働きとしてひどい扱いを受けていたのだ。そうした悲惨な境遇から、デンジの姿に共感や哀れみを抱く読者が多いのだろう。

「ジャンプ」の人気主人公に共通するポイントは…

それだけでなく、デンジの内面について《やることがわかりやすくてよかった。ぶれない》《表裏がなくて不快感がない》と評価する声も。作中でのデンジは「モテたい」など自分の欲望に忠実だったが、裏表がない性格が好感度を高めているようだ。

実は『週刊少年ジャンプ』の歴代ヒット作品を振り返ってみても、こうした主人公の特徴には共通点があった。たとえば『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』などの主人公は、いずれも欲望に忠実に動いている。デンジの欲望は飛び抜けて俗っぽいが、裏表がなくその時の感情を大切にする点では同じだと言えるだろう。

とはいえ、たんに天然で裏表がなければいいというわけではない。読者が共感できない天然キャラはわがままにしか見えないため、反感を買ってしまうはずだ。読者に愛されるキャラクターを作るためには、絶妙なバランス感覚が求められる。

今後「チェンソーマン」は、『ジャンプ+』で第2部が連載される予定。デンジがふたたびファンを熱狂させてくれることを期待しよう。

文=野木
写真=まいじつエンタ
■『チェンソーマン』11巻(藤本タツキ/集英社)

【あわせて読みたい】