
ジャンプ次世代の柱?『SAKAMOTO DAYS』が漫画ファンを惹きつける理由 (C)PIXTA
『週刊少年ジャンプ』といえば『ONE PIECE』のような看板漫画の存在感が目立つが、中堅を担う漫画も着々と育ちつつある。最近人気を伸ばしているのが、2020年末から始まった鈴木祐斗の漫画『SAKAMOTO DAYS』だ。
同作は、「ジャンプ」の定番であるバトルアクションを売りにした作品。主人公の坂本太郎は凄腕の殺し屋だったが、結婚をきっかけに引退する。一線から身を引いているため、かつて引き締まっていた坂本の体はブヨブヨにたるみっぱなし。しかし、未だ健在である殺し屋としての腕前を活かし、日常に潜む刺客たちと戦っていく…。
作者の鈴木は過去に『ジャンプ+』でハイレベルな読み切りを発表し、漫画好きの間で注目を集めていた。とくに奇妙な世界観を爆発させた『ロッカールーム』は、『世にも奇妙な物語』にて実写ドラマ化された実績もある。
その一方、「SAKAMOTO DAYS」は連載が始まった当初こそ話題性が乏しかったものの、最近ではじわじわと人気が上昇。とくに坂本が本格的に現役の殺し屋たちと絡み始めるようになった「死刑囚編」の前後で、ブーストがかかった印象だ。
バトル描写は折り紙つき!? 作画の秘訣とは…
同作の人気を支えているのは、やはりクオリティーの高いバトル描写だろう。ネット上では《ガチバトルのアクション描写が飛びぬけて良い。サカモトの強み》《SAKAMOTO DAYSはアクションだけでどんぶりで50杯は軽くご飯おかわりできる》《人体の動作がめちゃくちゃ上手くて、戦闘シーンとかは実写映画見てるくらいの迫力がある》と太鼓判を押されている。
実際に作者は作画へのこだわりを持っているようで、「ジャンプ」48~52号の「JUMP新世界漫画賞」の企画ではそのテクニックを公開。「どの角度から描けば一番アクションが映えるか」「疲れていても読みやすいか」を念頭に置いているそうで、迫力ある作画とは裏腹の細やかなテクニックについて言及していた。
もちろん作画だけでなく、バトルシーンの演出もかなりテクニカル。日常のシーンから、突如として緊迫感のあるバトルに移っていく緩急は、他の漫画では見られない同作ならではの魅力だ。
よく練られた設定、考察を呼ぶ伏線といった近年のトレンドではなく、アクションシーンの快楽を突き詰めている「SAKAMOTO DAYS」。「ジャンプ」の新たなムーブメントは、意外なところで芽吹きつつあるのかもしれない。
文=野木
【画像】
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