『シン・仮面ライダー』は国家権力のプロパガンダ? 庵野監督のゴマ擦り体質に失望の声

『シン・仮面ライダー』は国家権力のプロパガンダ? 庵野監督のゴマ擦り体質に失望の声

『シン・仮面ライダー』は国家権力のプロパガンダ? 庵野監督のゴマ擦り体質に失望の声 (C)PIXTA

庵野秀明監督の保守化が止まらない──。

興行収入17億円を突破し、歴代ライダー作品でも一番のヒットを期待される『シン・仮面ライダー』。一方で、作中に描かれる国家権力と仮面ライダーとの“癒着関係”が目にあまるとして、一部では批判の声が上がっている。

シン・シリーズのゴマ擦り体質とは

「シン・仮面ライダー」は、「仮面ライダー」シリーズのリブート作品として発表されたアクションヒーロー映画。作中では悪の秘密結社「SHOCKER」に対抗する主人公、仮面ライダー1号こと本郷猛の活躍が描かれていく。

そこで本郷のサポート役として登場するのが、「政府の男」と「情報機関の男」という人物だ。「SHOCKER」との戦いは、彼らの監視下のもと、さまざまな協力を受けながら繰り広げられる。

いわば同作におけるヒーローは、政府機関と結託して、悪の組織に対抗するという構図だ。これに対してネット上では、《人間の自由のために戦うヒーローが公権力とベッタリって…それでいいの?》《原作リスペクトって監督言ってたけど、石ノ森章太郎の原作では日本政府が敵だったこと知らんのか》《自分の信じる正義のために戦うヒーローのはずが、政府の犬に成り下がる主人公に共感はできなかった》《公安警察なんかが良く見えてしまうなんて、ほんとこの国の作り手は残念なのばっかりだな》といった指摘が続出していた。

さらに庵野監督が生み出した仮面ライダー像について、《非正規公務員ライダー》と揶揄する声も…。

元々庵野監督が携わった作品、『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』では、政府や公安が正義の味方サイドとして描かれてきた。その描き方も優秀さを強調するもので、「シン・シリーズは公安案件」と揶揄される始末。

また、監督本人も「シン・ゴジラ」のヒット時に、自民党のクールジャパン戦略推進特命委員会にアドバイザーとして招かれたことがある。そうした背景から、公権力への“ゴマ擦り”のような印象をファンが感じ取っているのかもしれない。

日本のフィクションは20年遅れている

人間離れした力をもつヒーローは、社会においてある意味危険な存在。その力が公権力に“利用”されることの問題について、さまざまなクリエイターが問い直してきた。

実際に海外では『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』など、現代社会における権力とヒーローの在り方を問う名作が数多く生まれている。

一方、日本のサブカルチャーはいまだにそうした問題と向き合えていない。公権力を無邪気に信頼する姿勢は庵野監督だけでなく、さまざまな作品に見受けられるだろう。

たとえば『名探偵コナン』では、大人気キャラの安室透が公安警察の一員という設定。また公安の構成員はみな頭脳明晰で優秀な正義の味方として描かれている。これに対して、「公安を美化しているのではないか」と疑問視する人もいるようだ。

なお、NHKで放送された「シン・仮面ライダー」のドキュメンタリーでは、「お客さんはマーベル作品のようなアクションを期待して観にくる。それをどう納得させるか」とアメリカのヒーロー映画を意識する庵野監督の言葉を聞くことができた。

だが、そこで本当に重要だったのは、アクションへのこだわりではなく、ヒーロー像を新しい世代に向けて更新することだったのではないだろうか。庵野監督が、真の意味で“大人向け映画”を撮ってくれることに期待したい。

文=「まいじつエンタ」編集部

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