1月19日より実写映画『ゴールデンカムイ』の上映が始まった。公開3日で興行収入が約5億3,400万円に達するスタートダッシュを切っており、ファンからの評判は上々のようにも見えるものの、映画ライターのあいだでは厳しい評価も上がっている。
原作の名シーンが小ぎれいな「ピクニック」に
映画は、野田サトルが『週刊ヤングジャンプ』で連載していた大ヒット漫画「ゴールデンカムイ」が原作。謎に満ちたアイヌの埋蔵金をめぐって、元軍人の杉元佐一やアイヌの少女・アシリパ、第七師団の鶴見中尉や元新撰組の土方歳三などが争奪戦を繰り広げていく。
今回の実写化では杉元とアシリパが脱獄王の白石由竹を仲間として、第七師団とひと悶着を繰り広げるところまでが描かれており、ほとんど“原作改変”がないシナリオとなっている。また、「ゴールデンカムイ」の見どころであるアクションシーンやギャグシーンの再現にも力が入っていた。
基本的にマンガの実写化は酷評されることが多いが、原作ファンからは絶賛の声が飛び出しており、ネット上では《映画館でもう1回見たいぐらい最高だった》《大満足でした…全人類みてほしい…》などと言われている。
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驚異の満足度96%(東宝調べ)‼皆様、応援ありがとうございます!
引き続き #ゴールデンカムイ を… pic.twitter.com/wKF8NltNKN— 『ゴールデンカムイ』公式 (@kamuy_movie) January 22, 2024
「ファンたちは絶賛ムードなので言いにくいのですが、シナリオやアクションシーンのクオリティは高いものの、映画として見るといろいろとお粗末な部分があることを指摘せざるを得ません。
よくもわるくも“ファンに叩かれないように上手く作ろう”という考えが徹底しすぎていて、原作にあった情熱や勢いが失われているように見えるからです。『ゴールデンカムイ』に登場する男たちはいずれも怖いくらいの狂気を秘めており、それが内面から迸るド迫力の瞬間が見どころとなっていますが、実写版は上品というか、お行儀のいい作品に落ち着いていますね。
また、大自然を舞台としているにもかかわらず、登場人物たちの衣装がやけに清潔感があり、小ぎれいなままであることも没入感を損なっています」(映画ライター)
実際に衣装に対する違和感を覚えた観客は少なくないようで、杉元たちが山のなかで食事するシーンが《ピクニックのようだ》とも揶揄されている。
“いつもの実写化俳優”が起用される業界の悪習
また実写版「ゴールデンカムイ」の最大の問題点は、キャスティングにあるという。
「今回、主人公の杉元役を演じているのは、数々の実写化作品でお馴染みの山﨑賢人。実写化で重宝されているのは、ハマリ役かどうかというよりも、プロデューサーの意向や所属事務所と配給会社の関係性が大きく影響しています。
山﨑は映画『キングダム』でも主演を務めていますが、監督の佐藤信介氏はキャスティングが自分の裁量になく、プロデューサーによってすでに決められていたことをポロリと漏らしていました。
『ゴールデンカムイ』の物語は戦争で心が壊れた元軍人たちと、アイヌの人々を軸としており、本来キャスティングには高度な判断が求められるはず。しかし商業的な判断でキャスティングが決められてしまったことで、そうした作品の大切な部分が損なわれているように見えるのです」(同)
キャスティングに関しては、劇中にアイヌ民族の人々が多数登場するにもかかわらず、アイヌをルーツとした俳優がほとんど起用されていないことが賛否を呼んでいる。アイヌ工芸家が衣装の制作に携わるという形で関わってはいるものの、“それだけでは十分でない”という意見も多い。
「ゴールデンカムイ」はさまざまな歴史と文化が織り成す重層的な作品として高く評価されている。日本の映画業界で繰り返されてきた“いつもの手法”で実写化したことを、どう評価すべきだろうか。
文=「まいじつエンタ」編集部
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