『君たちはどう生きるか』では鈴木敏夫がモデルに? ジブリ作品に登場する実在の人物たち

『君たちはどう生きるか』では鈴木敏夫がモデルに? ジブリ作品に登場する実在の人物たち

『君たちはどう生きるか』では鈴木敏夫がモデルに? ジブリ作品に登場する実在の人物たち (C)PIXTA

宮崎駿監督の最新作として話題を呼んでいるアニメ映画『君たちはどう生きるか』に登場するアオサギというキャラクターに関して、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがモデルだという説が盛り上がっている。

そもそもジブリ作品には、実在の人物をモデルとしたキャラクターが数多く登場してきた。今回はそのなかでも意外な人々を振り返ってみよう。

血縁者がモデルになったジブリキャラたち

宮崎監督はキャラクターを生み出す際に、身の周りにいた人をモデルとすることが多い。今や国民的アニメとなった『となりのトトロ』は、その代表的な例だろう。同作に登場する草壁メイは、宮崎監督の姪がモデルと言われている。

数奇な運命だが、この女性は『トイ・ストーリー3』のアートディレクターなどを務めた有名クリエイター・堤大介氏と結婚したことでも有名。ちなみに『ほぼ日刊イトイ新聞』で行われた糸井重里氏との対談で、堤氏は妻の性格について「『トトロ』のメイちゃんに本当にそっくりなんです」と明かしていた。

さらに「となりのトトロ」に関しては、サツキとメイの母親・草壁靖子に宮崎監督の母親が反映されているという説も。草壁靖子は病弱で入退院を繰り返している設定だが、宮崎監督の母も長いあいだ病床に臥せっていた。

この母親像はきわめて鮮明だったようで、ほかの宮崎作品にも頻繁に投影されている。『風立ちぬ』のヒロイン・菜穂子が代表的だが、『天空の城ラピュタ』に登場するドーラにも共通点があったという。

書籍『ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ』で、鈴木プロデューサーは「ドーラは『ラピュタ』の制作中に亡くなった宮崎さんのお母さん」と語っており、『映画天空の城ラピュタ GUIDE BOOK』では、宮崎監督の実弟である至朗氏が「精神的迫力はまさにドーラに通じるものがあった」と回想している。

病弱でありながらパワフルでもあった母の姿が、ドーラに反映されているのだろう。

仕事上の関係者たちもモデルに

そのほか、宮崎監督は仕事で深く関わった人物をキャラクター化することも多い。たとえば『千と千尋の神隠し』の主人公・荻野千尋は、『金曜ロードショー』の担当者だったプロデューサー・奥田誠治氏の娘がモデルとなっている。

本名をはじめ、いろいろな部分が似ていたようで、あまりにもそっくりすぎるとして、奥田氏の妻が怒ったという逸話があるほど。劇中では千尋がかつて靴を川に落としたエピソードが語られていたが、これは実際に起きた出来事を元にしているそうだ。

そして『ハウルの動く城』では、『攻殻機動隊』などで知られるアニメ監督・押井守監督にそっくりな犬・ヒンが登場。押井監督がモデルだという説について、スタジオジブリの公式アカウントでは、鈴木プロデューサーが《本当です。顔がソックリでしょ(笑)》とお墨付きを与えていた。

押井監督は、アニメ業界でも屈指の愛犬家として知られる人物。宮崎監督とは古くから交流があるため、遊び心として犬に変身させたのかもしれない。

なお、押井監督の『機動警察パトレイバー』では、逆に宮崎監督をモデルにした「崎宮駿」という人物が登場していたため、お互い様という見方もできるだろう。

また宮崎監督が企画、高畑勲氏が原作・脚本・監督を務めた『平成狸合戦ぽんぽこ』は、まさに人間関係をアニメ化した作品だった。同作は、東映動画(現在の東映アニメーション)の思い出が下敷きとなっているのだ。

かつて東映動画では過酷な労働環境が問題となり、宮崎監督と高畑監督はそれに対抗する労働組合運動に参加していた。そんな青春の日々を風刺として昇華させたのが「平成狸合戦ぽんぽこ」であり、正吉は高畑監督自身、権太は宮崎監督がモデルだという。

ジブリ作品は思わぬ人物やエピソードがモデルとなっていることが多い。モデルを意識しながら各作品を見直せば、新たな発見があるだろう。

文=ゴタシノブ

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