是枝裕和『海街diary』がヒットしなかった理由…『怪物』は真逆の方向性か

(C)Matteo Chinellato / Shutterstock

是枝裕和監督の最新作『怪物』の公開を記念して、2015年公開の映画『海街diary』が6月3日のフジテレビ系・土曜プレミアムにて地上波放送された。海の見える街を舞台に、四姉妹が絆を紡ぐ、家族の物語だ。

「同作は、第39回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞しましたが、出展した第68回カンヌ国際映画祭では受賞ナシ。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずをメインに据えて、樹木希林や大竹しのぶなど、これでもかというほどに有名俳優を投入しましたが、国内限定作品として終わりました」(週刊誌記者)

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しかし、そもそも国内でもそこまで観客からの評価は高くない。興行収入は16.8億円で〝中ヒット〟程度。予算や話題性を考慮すると、かなり物足りない数字であり、〝コケた〟と評価されてもおかしくない。

「広瀬すずを堪能するための映画」

「『海街diary』は、特に事件など起きず、淡々と進むストーリーが賛否両論となり、エンタメ映画としてはかなり厳しい結果になりましたね。今回の放送でも『主役4人と鎌倉のPV』『美人4姉妹を楽しむ映画だった』『広瀬すずを堪能するための映画でしかなかった』なんて感想が多い。

しかし、最新作『怪物』は、社会性をふんだんに取り入れながらもサスペンス要素があるなどエンタメ性をしっかり残しており、絶妙なバランスが取れています」(同・記者)

第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したことも追い風になってか、国内でもロケットスタートを切った。

「『怪物』の脚本は、脚本家・坂元裕二氏の書き下ろし。是枝監督のデビュー作である『幻の光』以来となる、監督が自ら脚本を執筆していない作品となりました。

是枝監督自身が坂元氏にラブコールを送って今回の共作が実現したそうですが、その結果が脚本賞だけ受賞なんていう、なんとも皮肉なことになりましたね。まあ、2018年に『万引き家族』でパルム・ドールを獲っているので、自尊心が傷つくことはなさそうですが…」(同)

『海街diary』をつまらないと感じた人も、『怪物』は一見の価値ありかもしれない。

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