人種や性別を問わず、世界中の人々に夢と希望を与えてきた巨大コンテンツ『ディズニー』。しかし近年では同社に“反同性愛”というただならぬ疑惑が浮上しており、今まで培ってきたイメージを覆されそうになっている。
会社の理念をくつがえす出来事
「ディズニー」といえば、多くの人がLGBTQフレンドリーなイメージを持っているはず。それは「ディズニー」自体が、個々の違いを受け入れる“ダイバーシティ&インクルージョン”を掲げているためだ。また、LGBTQの象徴ともいえるレインボーカラーを用いたアイテム「The Walt Disney Company’s Pride collection」も発売されている。
表では時代の価値観に合った活動が目立つ「ディズニー」だが、そうしたイメージに異議を唱える関係者も。ディズニーのアニメ番組『アウルハウス』でクリエイターを務めるダナ・テラスという人物は、3月8日にツイッター上で「ディズニーの見栄えを良くするのにうんざりしている」と心情を吐露していた。
I'm fucking tired of making Disney look good so WHO'S READY FOR ANOTHER ✨CHARITY LIVESTREAM✨ MARCH 13th!!!
More details to come. 🏳️🌈 #dontsaygay #disneydobetter pic.twitter.com/1MtumvjfB0
— Dana Terrace (@DanaTerrace) March 7, 2022
そもそも「アウルハウス」はバイセクシュアルの少女が主人公の作品だが、同社の偉い人から「バイセクシュアルや同性愛の関係性は表現できない」などと指摘されていたそう。この反LGBTQの姿勢が火種となり、3月15日に内部ストライキが計画されるほど、由々しき事態となっていたという。
大本はウォルト・ディズニーにあり?
しかし彼女の告白は、あくまで氷山の一角。「ディズニー」は他にも、反同性愛の疑惑が強まる行動を取っている。
アメリカのフロリダ州では3月8日に、小学校での性的思考や性自認の“議論”を規制する法案が新たに生み出され、「差別の助長」として抗議や批判の声が上がっていた。そんな中、「ウォルト・ディズニー・カンパニー」の代表兼CEOのボブ・チャペック氏が、法案を支持する議員に多額の金銭を寄付していたことが判明。「ディズニー」のイメージに反する行動を、CEOが率先して行っていたとして問題となった。
また「ディズニー」の生みの親であるウォルト・ディズニーについて、ハリウッド俳優のメリル・ストリープが「性差別主義者だった」と発言したことも。2014年に開催されたナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の受賞式にて、メリルは「彼は女性を好きでなかった」「レイシスト的なところがあった」などと話している。
しかしその一方で、「ディズニー」は2016年ごろにジョージア州で成立しそうになった差別的な法案に反発したことも。「聖職者が同性婚を執り行うことを拒否できる」という法案をめぐり、もし制定されれば同州から事業を引き上げるなどの意向を示し、ジョージア州を痛烈に批判していた。
どこまでが会社のイメージを守るための行動で、どこからが“本音”なのか。あらためて有言実行のスタンスを表明しなければ、ファンは安心できないかもしれない。
文=大獄貴司
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