さまざまなジャンルに脱線するカメレオン漫画として知られている『高校生家族』。4月25日発売の『週刊少年ジャンプ』21・22合併号に掲載された最新話では、将棋漫画『ハチワンダイバー』を髣髴とさせる展開が幕を開けたようだ。
※『高校生家族』最新話の内容に触れています
同作は、ある日家族全員が高校生になった「家谷家」の青春を描くギャグ漫画。第83話『妹の後輩』では、2年生に進級したばかりの妹・家谷春香がメインキャラとなった。
将棋部に後輩が入ってくることを期待する春香だったが、部室に新1年生の今村葵という少女が来訪。待ちに待った同性ということもあって、心を躍らせる。
しかしその翌日、彼女の正体が裏社会で違法の将棋に興じる“真剣師”だったことが発覚。もともとそうした家系に生まれついたらしく、将棋は「殺し合い」だと語る。そして楽し気に将棋を打つ人間が許せないらしく、先輩たちの心をへし折っていくのだった──。
「真剣師」の登場する漫画といえば、やはり柴田ヨクサルによる『ハチワンダイバー』が代表的。こちらも裏社会の人間が出てくる作品で、将棋をたんなるゲームではなく“命の駆け引き”として描いていた。
まるでそのパロディーのような展開が始まったことで、読者たちは《高校生家族まさかのハチワン要素ぶっ込んできて草》《高校生家族を読んでたらハチワン始まってた》《ここでハチワンやられるのは笑っちゃうのよ》と盛り上がっている。
「空席のジャンル」にふたたび特攻
またネット上では、《高校生家族、ハイキュー終わったと思ったらハチワン始まってない?》といった声も。「高校生家族」ではこれ以前にも、父・一郎のバレーボール部での活躍が青春漫画のように描かれており、『ハイキュー!!』に並ぶ熱さだと話題を呼んでいた。現在の「ジャンプ」ではスポーツ漫画も将棋漫画も不在なので、作者はその隙間を狙い撃ちしているのかもしれない。
なお、春香の将棋部に関する話は急に始まったわけではない。これまでもさまざまなエピソードが描かれており、将棋の世界に身を置くことを「殺しあいのらせん」と表現するなど、殺伐とした雰囲気を若干醸し出していた。あらかじめ仕込んでおいて布石を、ここにきて始動させるつもりだろうか。
ちなみに気になる対局シーンの描き方だが、「ジャンプ」2021年52号の情報によると監修は不在。高レベルAIの対局を参考に盤面を描いているのだという。
どこまで本格的な将棋漫画になるのか、この先の展開から目を離せない。
文=野木
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