“性的搾取”で炎上する作品との違いは?『マガジン』露骨なセンシティブシーンはお咎めなし

“性的搾取”で炎上する作品との違いは?『マガジン』露骨なセンシティブシーンはお咎めなし

“性的搾取”で炎上する作品との違いは?『マガジン』露骨なセンシティブシーンはお咎めなし (C)PIXTA

昨今、萌え系の漫画やアニメをめぐって度々巻き起こる“性的搾取”についての議論。批判のやり玉に挙げられた作品は数知れないが、キケンな作風にもかかわらず、なぜか一向に火の手が上がらない作品も存在するようだ。

露骨描写もノーダメージ

たとえば、『週刊少年マガジン』で今年4月から連載が始まった日常4コマ『生徒会にも穴はある!』。中高生の男女が繰り広げる下ネタ全開のやりとりがメインとなっており、スリリングな描写も読者の支持を集めている。

そして9月14日発売の「マガジン」42号に掲載された第19話では、“一線”を超えるような描写も。いわゆる温泉回が描かれたのだが、そこで「尾鳥たん」というキャラクターの胸部が、丸見えの状態で掲載されていた。

尾鳥たんは、女性のような見た目の男性という“男の娘”キャラ。以前から胸部を大胆にアピールしていたが、今回はさらなる勝負に出ている。実際に《この1コマのためだけに買った》という声もあるほど、読者を興奮させているのだが、あまり非難の対象にはなっていないようだ。

また2020年には、『週刊ヤングマガジン』を代表するセクシャル漫画『パラレルパラダイス』の巨大ポスターが、JR池袋駅に登場。少女だけが存在する世界に迷い込んだ男性が、交尾していくという身も蓋もない内容なのだが、幸いにも炎上には発展していない。

少年漫画雑誌でギリギリな描写を行うのも、公共の場でセクシャルな漫画の広告を出すのも、かなりライン際を攻めた姿勢に見える。しかし過去の騒動を振り返ってみると、不思議とそこまで攻めていない作品ほど炎上しやすかった。

たとえば、2019年に巻き起こった、ドタバタラブコメディ『宇崎ちゃんは遊びたい!』と日本赤十字社のコラボ騒動の例が挙げられるだろう。

なぜ炎上しやすい作品があるのか

当時、献血の協力を促す『宇崎ちゃん』のキャンペーンポスターが、各所に張り出された。しかしポスターに描かれたヒロイン・宇崎花の胸部がボリュームたっぷりだったこともあり、「環境型セクハラ」などと指摘され、未曽有の大炎上へと発展することに。

他にも、今年は漫画家・比村奇石による『月曜日のたわわ』の炎上も記憶に新しい。同作は『日本経済新聞』の全面広告に登場したのだが、ツイッター上で大炎上。広告自体はセクシーな要素のないイラストだったのだが、作品の内容が“女子高生の性的搾取”だとして、物議を醸してしまった。

さらについ先日も、『ラブライブ!サンシャイン!!』と『ららぽーと沼津』のコラボイラストに批判が殺到。「ららぽーと」の制服を『Aqours』のメンバーが着たイラストだったが、スカートにおける股間のVラインがくっきり描かれており、“股の呼吸”などと揶揄されている。

とはいえ、いずれもイラスト自体にはそこまで害がなく、作品内容も尖ったものではない印象。なぜそんな作品群が炎上したのかといえば、やはり一般層に向けた広告に起用したため、目立ちやすかったのだろう。

しかしそれ以上に踏み込んでいえば、炎上した作品には共通点がある。「ここまでは問題ない」というラインが、発信者と受け手の間で“ちょっとだけ”ズレている点だ。露骨なお色気ではなく、平凡な描写の中に実は性的搾取が含まれている…という構造にこそ、一部の人々を燃え上がらせる原因があるのではないだろうか。

今後の漫画編集者などには、炎上しやすい表現を見抜く力が求められそうだ。

文=「まいじつエンタ」編集部

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