『THE FIRST SLAM DUNK』は大傑作! 批判が無意味なワケ

『SLAM DUNK』新装再編版 1巻(井上雄彦/集英社) 画像:まいじつ

2022年12月3日の公開から、前評判を覆して絶賛の声が続出しているアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』。しかし、未だに〝新しいSLAM DUNK〟を受け入れられないという往年のファンも少なくない。

「THE FIRST SLAM DUNK」は、井上雄彦による漫画『SLAM DUNK』を原作にしたフルCG映画。興行通信社によると、12月27日時点で興行収入は50億円を超え、映画の週間ランキングで4週連続1位を獲得している。

そんな同作だが、公開前の評判は散々なものだった…。

まず映画が手書きアニメーションではなく、フルCGということで、ファンからは懸念の声が。続いて追い打ちをかけるように、前売り券の発売後に、過去のアニメ版から声優を一新すると発表したことで批判が殺到してしまう。

さらには公開直前までストーリーが明かされなかったため、ファンの不安はますます募り、公開前から爆死の空気が流れていた。

しかし映画が公開されるや否や、鑑賞したファンからは、

《映画館で観るべき映画だった》
《観ていて終始力が入った》
《音や映像のどれもがかっこよかった》
《ファーストってことは続きもあるんだろうか…。期待してます》

などと絶賛する声が続出。

古くからのファンをはじめ、初めて同作に触れたファンをも魅了しているのだが、一部の原作ファンや旧アニメファンは、今もなおアニメの声優交代の件などで拒否感があるようだ。

※『THE FIRST SLAM DUNK』の内容に触れています

そもそも「THE FIRST SLAM DUNK」の主人公は、「SLAM DUNK」で主人公だった桜木花道ではなく宮城リョータで、映画冒頭、リョータの話から始まる。

その後、ストーリーは〝山王戦〟へ突入。原作でも屈指の人気を誇る名エピソードでありながら、意外にも今回の映画が公開されるまで映像化されていなかった。

だからこそ前評判が一変したともいえるのだが、同映画を観るべき理由はそれだけではない。

この映画は、「SLAM DUNK」のストーリーを描いているだけでなく、〝旧ファン〟と映画で入った‶新しいファン〟を描いている作品と見なすことができるのだ。

というのも作中には、リョータの母、兄、妹が登場。ただ兄・ソータに関しては回想シーンに出てくるだけで、リョータが幼い時に亡くなっている。

母親は亡き兄を求める一方で、妹はリョータを応援していく。この家族の姿が、ある種のメタファーになっているようだ。

「映画では兄・ソータが『今までのSLAM DUNK』、亡くなったソータの影を追いかけ続けるリョータの母が『これまでのSLAM DUNKファン』のメタファーになっています。

その反面、リョータ自身が『THE FIRST SLAM DUNK』、妹は『THE FIRST SLAM DUNKのファン』のメタファーに。つまり同作が宮城リョータをメインに作っていることで、明らかに新世代のファンに向けた作品だということがわかります。

同じような例を挙げると、2012年に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』も〝物語をつくるための物語〟でしたね。ファン向けとはいえ、どういったファンのために作られたのか、という点ではどちらも似ているのかもしれません」(映画ライター)

同映画は、ストーリーや構成はもちろん、原作者・井上の絵がそのまま動いているような表現も大きな魅力になっている。

アニメ映画というと入場特典がつく場合も多いが、「THE FIRST SLAM DUNK」は、入場特典などがなくても十分観る価値のある作品と言えるだろう。

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