『週刊少年ジャンプ』では推理漫画が“鬼門”と言われており、長らくヒット作に恵まれていない。仮に連載されることがあっても、あえなく打ち切りになることが多いようだ。今回はそんな過去作の中から、とくにキワモノ扱いされている3作品をご紹介しよう。
「コナン」「金田一」に続けず…90年代の黒歴史
<その1>『ぼくは少年探偵ダン!!』ガモウひろし
90年代には他誌で推理漫画のヒット作が生まれていたため、「ジャンプ」でも似たような作品が模索されていた。そんな中、彗星のように散っていったのが1998年に連載された『ぼくは少年探偵ダン!!』。『とっても!ラッキーマン』の作者・ガモウひろしによる意欲作だ。
同作の主人公は、“一刀両ダン”というふざけた名前の小学生探偵。頭の傷口から脳に酢を直接注ぎ込むことで、脳が「酢入り(推理)」状態になり、大人顔負けの推理力を発揮するというトリッキーな設定だった。
子ども向けのギャグを重視していることが分かるだろうが、ときにはミステリー要素が作り込まれることも。しかしそれが度々長文で説明されており、「子ども向け×長文」の矛盾した組み合わせとなってしまった。さらに中盤からシリアスに大きく舵を切ったが、人気回復とはいかず、わずか19話で完結している。
<その2>『少年探偵Q』原作:円陣、作画:しんがぎん
『少年探偵Q』も、1998年に連載された作品。ドラマで少年探偵として活躍する子役スターの英久太が、プライベートでも事件を解決していくストーリーだ。
事件編と解決編が分かれており、読者にも推理を楽しませる構成だったのだが、肝心のトリックは悪い意味で難解なものばかりだった。
たとえば事件編で「廃村」として登場した村が、解決編で「実は多くの村人が残っていた」と判明するなど、構成が後出しジャンケンのようになってしまうことも。そのためか、読者はすぐさま離れ、たった15話で完結を迎えている。
同作は原作と作画が分かれていたのだが、作画担当のしんがぎんも粗末な原作に不満があった様子。単行本2巻のおまけページでは、原作に対して「ちょっとムリがあるのでは」とぼやいており、同巻のあとがきでも「漫画を描くことのリスク」をテーマに作品への無念を吐露していた。
パクリ騒動で人気急落?
<その3>『学糾法廷』原作:榎伸晃、漫画:小畑健
『学糾法廷』は、「ジャンプ」2015年1号から連載された推理漫画。あの小畑健が作画を担当しており、注目度が高かったのだが、全21話という短さで完結している。
同作の舞台は、教育現場に「学級法廷制度」が導入され、学級会の中で裁判が取り扱われるようになった日本。作中では小学生弁護士・犬神暴狗が、小学校で起こる事件を解決していく。
しかし“学級会の裁判”という要素が、殺人事件を「学級裁判」で解決するゲーム『ダンガンロンパ』によく似ていることが問題に。連載当初から、読者の非難が殺到してしまった。それだけでなく、事件の内容や刑罰が子ども騙しだったことも、火に油を注いだようだ。
たとえば、子どもを脅迫した大人が犯人となった際、下されたのは「廊下の雑巾掛け100往復」という軽微な刑。現実であればもっと重い社会的制裁が下されるはずなので、リアリティーの欠如を感じざるを得ない。パクリの有無はともかく、作り込みの甘さが招いた悲劇と言えるだろう。
以上の3作品にかぎらず、「ジャンプ」では純粋な推理漫画がヒットした試しがない。推理と別ジャンルを掛け合わせたものがほとんどだ。いつか汚名を返上するような、傑作ミステリーが誕生することを期待したい。
文=野木
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