ハローキティは現代のジャンヌダルク?『ベイブレード』コラボがシュールな消費ではないワケ

ハローキティは現代のジャンヌダルク?『ベイブレード』コラボがシュールな消費ではないワケ

ハローキティは現代のジャンヌダルク?『ベイブレード』コラボがシュールな消費ではないワケ (C)PIXTA

『こち亀』や『貞子』とのコラボなど、仕事を選ばないことで有名なハローキティ。つい先日には、男の子向けおもちゃの『ベイブレード』とコラボすることが発表された。一見シュールな光景ではあるが、大げさにいうとその仕事は“ジェンダーのかく乱”を実現しているのかもしれない…。

隠されたコラボの意図

「ベイブレード」といえば、タカラトミーが発売している現代版のベーゴマ。発売開始から20年が経過し、今なお小学生男子が夢中となっている。女性人気の高いハローキティのコラボ先として、衝撃を受ける人も多かったようだ。

もともとハローキティは、今年3月に「ベイブレード」の公式アンバサダー『ベイバサダー』に就任していた。今回はそれを記念した玩具として、「B-00 ブースター アストラル ハローキティ.Ov.R’-0」が発売。さらに8月には、サンリオピューロランドで「ベイブレードバースト」の大会「ハローキティカップ」が開催されるという。

なぜ水と油のような2つのコンテンツが、コラボを果たすことになったのか。それを紐解くカギは、ハローキティの公式YouTubeチャンネルでの発言にあるかもしれない。

8月30日に投稿された動画では、視聴者から寄せられた質問の数々にハローキティが回答。そこで「男性がキティちゃん好きなのはダメなの?」という質問が寄せされた際、力強くその言葉を否定。女性向けのイメージを脱却できていないのは自らの力不足であると話し、「誰のどんな好きも否定されない、否定しない。そういうふうになったらいいな」と語っていた。

男性をジェンダーの呪縛から解放?

思えば、ハローキティは過去にもさまざまな男性向けの作品とコラボしてきた。ロボットや戦闘機などをラインナップとする玩具シリーズの超合金や、「ザク」や「ガンダム」のコスプレをしたガンプラシリーズなど、その数は決して少なくない。

いずれも現状は“シュールなコラボ”として消費されているが、今後も数を重ねていくことで、自然な風景になる可能性も。そうなれば、「キティちゃん好きの男性」が社会に受け入れられる後押しになるだろう。

「男性がハローキティを愛するのはおかしい」というのは、「女性がヒーローものを応援するのはおかしい」といった言葉と同じく、ジェンダー規範の押し付けにあたる。ただ、これまでのジェンダー規範からの解放運動は、主に女性を救うものが多かった印象だ。

今年初頭には、パンツスーツ姿のミニーマウスが『ディズニー』公式から発表され、話題を呼んだが、これは女性が男性の服を着ても良いというもの。社会全体を見ても、女子生徒が制服のパンツを選べる学校は増えているが、逆に男子生徒がスカートを選べる学校はとても少ない。

そう考えると、ハローキティは勇気ある挑戦として、男性をジェンダーの呪縛から解き放とうとしているようにも見える。現代のジャンルダルクは、はたして社会を変えられるのだろうか。

文=富岳良

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Burdun / PIXTA