『ネギま』赤松健の当選を支えた力…政治家に利用される“ちょろいオタク”たち

『ネギま』赤松健の当選を支えた力…“ちょろいオタク”を動員してきた政治家たち

『ネギま』赤松健の当選を支えた力…“ちょろいオタク”を動員してきた政治家たち (C)PIXTA

『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』などでお馴染みの漫画家・赤松健氏が、第26回参院選で見事当選。勝因はオタクの心をがっちり掴んだ選挙活動だと言われているが、これまでにもさまざまな政治家が同じような戦略をとってきた。代表的な“オタ媚び”の例を振り返ってみよう。

ローゼン閣下・麻生太郎

元祖オタク媚び政治家として印象が強いのが、やはり「自民党」副総裁の麻生太郎氏。漫画好きであることを公言しており、空港で『ローゼンメイデン』を偶然手に取った場面を目撃されたことがきっかけで、“ローゼン閣下”などと呼ばれるようになった。

さらに麻生氏は、「漫画好き」という属性を最大限に活用。まだオタクというパーソナリティが市民権を得ていなかった2000年代には、秋葉原の街頭演説などで、漫画の話題について言及。当時の「2ちゃんねる」などで広まり、「オタクの味方」のような立ち位置に祭り上げられていく。本当にそのイメージと合致した政治思想の持ち主かは疑問が残るが…。

また麻生氏の戦略に対して、あの宮崎駿監督が釘を刺したことも。2008年に「日本外国特派員協会」で行われた記者会見にて、麻生氏の漫画好きアピールについて聞かれた際に、「恥ずかしいと思う。こっそりやればいいこと」などとコメントしていた。

「自民党」で受け継がれる漫画好き戦略

そんな麻生氏に乗っかることで、最近注目を集めたのが衆議院議員の高市早苗氏。昨年の自民党総裁選に立候補した際、『総裁選CafeSta』というネット番組で、麻生氏から読み損ねた漫画のストーリーを教えてもらっていると明かしていた。

いわばオタクに親近感を抱かせるだけでなく、麻生氏とのつながりもアピールできる冴えた戦略。しかしネット上では、《これ明らかにパフォーマンスだよ》《いや読みたい漫画ぐらい買えよ》《オタクに媚びんな》といった厳しい声も。

総裁選出馬会見でもアニメやゲームなどへの投資を口にしていた高市氏だが、今のところオタク受けは十分ではないようだ。あまりに擦り寄りが露骨すぎると、さすがに見透かされてしまうのかもしれない。

さらに、東京都知事の小池百合子氏もオタクへ露骨なアピールを行っていた。

小池百合子はオタク文化を応援?

小池氏は、2016年の都知事選で《コミケ開催地も出版社もその多くが東京にあるのです。東京都が総力を挙げて、コミケを応援します!》というツイートを投稿している。

世界最大の同人誌即売会『コミックマーケット』の応援を公言しただけにとどまらず、同ツイートには『魔法使いサリー』の夢野サリーに扮したコスプレ画像も添付されていた。

アニメや漫画などの表現規制が活発に議論されている中、グレーゾーンの極みである「コミケ」を政治家に肯定してもらうことは、大きな意味がある。そのため世のオタクから歓喜の声が上がったのだが、一方で小池氏には“表現規制派”のイメージもあったため、《本当にコミケを応援するの?》と混乱を招いてしまうことに…。

「自民党」の偉大な政治家には賛否両論

また、先日演説中の銃撃で亡くなった安倍晋三元首相も、オタク文化とは切っても切り離せない存在だろう。というのも、2016年に行われた「リオデジャネイロオリンピック」の閉会式にて、通称“安倍マリオ”なるパフォーマンスで耳目を集めたからだ。

式典自体が日本のポップカルチャーを盛り込んだものだったのだが、そこで土管から当時の安倍首相がさっそうと登場。言わずと知れた任天堂のアイコン「マリオ」の姿に扮して、会場を盛り上げた。

しかし賛否の激しい政治家だったこともあり、案の定ネット上では賛否がまっぷたつ。Webメディア『LITERA』は「北朝鮮などの独裁国家でオリンピックが開かれないかぎり、こんなショーはありえないだろう」とすら批判していた。

赤松氏のように成功することもあれば、見透かされるリスクもあるオタク媚び戦略。ここまで政治家たちが重要視するほど、オタクと呼ばれる人々が多数派になったということなのかもしれない。

文=大上賢一

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