『Gのレコンギスタ』は“かわいい声”排除! 富野由悠季も苦言を呈すアイドルアニメの功罪

『Gのレコンギスタ』は“かわいい声”排除! 富野由悠季も苦言を呈すアイドルアニメの功罪

『Gのレコンギスタ』は“かわいい声”排除! 富野由悠季も苦言を呈すアイドルアニメの功罪 (C)PIXTA

2010年代から続くアイドルアニメブームで、声優という職業のあり方も激変。ユニットを組んでライブすることが当たり前になり、若さやルックスを重視したキャスティングも増えてきた。その一方で声優としての“個性”は、軽視されているようにも感じられる…。

最近の「かわいい声」はみんな同じ

7月30日に公開された『ファミ通.com』のインタビュー記事で、『ガンダム』シリーズの生みの親・富野由悠季監督が、昨今の声優事情に関して言及。この夏に劇場版第4作・第5作が公開された『Gのレコンギスタ』について、「かわいい声」の声優を使っていないことを明かしていた。

富野監督いわく、最近の声優業界で「かわいい声」とされている声優は、みんな同じように感じられてしまうとのことだ。

たとえばアイドルアニメなどでは、ヒロインを単体で目立たせるのではなく、グループとして売ることが重要になるもの。そこであえて1人の個性的な声優を突出させるのを避け、調和がとれるように仕組む…というビジョンが、アニメスタッフの中にあるのかもしれない。

そしてこれはまさに『AKB48』以降のアイドルグループの売り方と同じ。個ではなくグループを押し出す手法が、アイドルアニメブームを通して、キャラクターの作り方や声優の演技に取り入れられたとも考えられる。

伊波杏樹も実は個性派?

声優の没個性化に危機感を持つアニメファンは、少なからずいるようだ。富野監督のインタビューに対しても、ネット上では《顔がいい、かわいい声の娘は使わないで欲しい もっと面白い声の娘が絶対いるだろ》《富野正論だわ》といった賛同の声が。

なにより富野監督が戸田恵子や朴璐美といった特徴的な声の女性声優を発掘してきたこともあり、インタビューでの指摘には大きな説得力があったようだ。

ただ、声優の力量が昔と比べてなくなってしまったかどうかは微妙なところ。たとえば富野監督は「かわいい声」の話の流れで『ラブライブ!』に触れていたが、『ラブライブ!サンシャイン!!』の高海千歌役である伊波杏樹はその反証になる。

同作では“美少女声”を出していた伊波だったが、スマホ向けゲーム『ヘブンバーンズレッド』では逢川めぐみというコテコテの関西弁キャラを演じている。もし逢川めぐみのような演技が先に世に出ていたら、個性派声優の1人として数えられていたかもしれない。

ライブやイベントを前提としたキャスティング以前に、そもそもアイドルアニメが突出した個性を求めていないのだろう。三石琴乃がダミ声でアイドルをやるようなアイドルアニメは、今後も出てくるのだろうか。

文=大上賢一

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FabrikaSimf / PIXTA