オタクが『メタバース』を潰す? 中国の偽ディズニーランドもビックリな無法地帯化

オタクが『メタバース』を潰す? 中国の偽ディズニーランドもビックリな無法地帯化

オタクが『メタバース』を潰す? 中国の偽ディズニーランドもビックリな無法地帯化 (C)PIXTA

近年ニュース番組でも大々的に取り上げられ、流行語と化している「メタバース」。輝かしい未来のイメージが与えられ、意識が高い人々が盛んにその可能性を議論している。しかしその実態はかけ離れたものらしく、「無法地帯」と言われてしまうことも…。

違法キャラクターのオンパレード

海外ケーブルテレビ局の『HBO』は、今年7月から『We Met in Virtual Reality』というドキュメンタリー映像を公開。同映像は全編VRChatという名のソーシャルVRプラットフォーム、平たく言うとオンラインゲームの世界上で撮影されたものとなっている。

友達や恋人を作り、寝食の時間までゲーム世界内で行う、まさにメタバースに生きる人々の暮らしを追っているのが見どころ。仮想世界に生まれた新たなライフスタイルは、一般視聴者に驚きと好意的な印象を持って迎えられた。

しかし、海外のオタク層が実際に映像を見たところ、その内容に激怒。なんでも登場する3Dモデルに、権利関係上アウトなものばかりが映っているというのだ。

実はVRChat上では、有名キャラクターのモデルや一般流通されたゲームから3Dのデータを引き抜き、アバターとして使用している層が存在する。もちろんその行為自体は、きわめてグレー…というか完全にアウトだ。とはいえ一般人には違法・合法の区別などつかないため、ドキュメンタリーでは違法なアバターを持つプレイヤーの存在をまったく検閲せずに放送してしまったのだろう。

電脳版「夢の国」の実現にはまだまだ遠い

しかし、こうした「見た目」問題はオタクたちの内輪話だけでは済まないかもしれない。現在国内のSNSユーザーを見ると、アイコンなどに有名人や有名キャラクターの画像を勝手に使用している人々は数多く存在する。もしメタバースが普及していったら、同じ光景がその中に広がりそうだ。

メディアが喧伝するメタバースは、年齢や性別などの枷を取り払い、誰もが自由に“なりたい自分”になれるものだとされる。耳に心地よい言葉がならび、あたかも「夢の国」のような扱いだ。実際に意識の高いクリエイター気質の人々は、自己実現のために独創性を発揮し、美しい理想の実現に努めるかもしれない。

しかしおそらく多くの一般人は、“なりたい自分”など具体的にイメージできず、世間の人気者になりきるくらいが関の山。結局は、どこかで見たことがある人気者に似たアバターばかりがうろつく、悪夢のような空間が生まれるのではないか。

メタ・プラットフォームズは先月末ごろ、メタバース部門が第2四半期に28億1,000万ドル(約3800億円)の損失となったと発表している。また、マーク・ザッカーバーグCEOは従業員集会で「事業計画があまりに楽観的過ぎた」と自らの見通しを誤ったことを認めたという。

さらに権利者が規制を行ったとしても、今度はギリギリ訴えられない低クオリティなパチモノが市民権を得る可能性も…。同じ夢の国でも、いわゆる“中国版ディズニーランド”のようになってしまいそうな予感だ。

文=富岳良

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CREATIVE WONDER / PIXTA