日本国内の作品を対象とした『日本ゲーム大賞』の結果が明らかとなり、ゲームファンたちが大盛り上がり。その最中、日本を代表するゲームクリエイター・桜井政博氏が、賞レースの“欠陥”を指摘し、大きな波紋を呼んでいる。
ゲームの賞は何のためにあるのか
桜井氏は、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズや『星のカービィ』シリーズの生みの親として知られる人物。そんな彼が、「日本ゲーム大賞」の年間作品部門が発表されたのと同じ9月15日に、「ゲームに与える賞」という動画を投稿した。
桜井氏は、そもそもゲームの一等賞を決めること自体にあまり賛成ではなく、優劣を競う必要はないという思いを明らかに。ゲームの賞は、純粋に制作者やファンを喜ばせるためのものとして存在するべきだと、自身の考えを述べている。
また、「日本ゲーム大賞」のように得票数が評価基準を大きく占める賞の場合、実質的に人気投票になってしまうことを指摘。票数だけでなく、独創性などの面で評価される賞があったほうがいいと語っていた。
ちなみに、桜井氏自身も「日本ゲーム大賞」に評価する側として携わっている身。そんな同氏が発表の当日に批判的な動画を投稿したということで、ゲームファンに大きな衝撃を与えたようだ。
評価システムを変えていくべき?
実際に発表された「日本ゲーム大賞」の受賞作を見てみると、ゲーマーなら誰しもが知っているタイトルがズラリと並ぶ。年間作品部門の大賞は今年2月に発売されたフロム・ソフトウェアの『エルデンリング』が選ばれ、優秀賞にも『バイオハザード ヴィレッジ』や『星のカービィ ディスカバリー』といった豪華な顔触れが揃っている。たしかに、たんなる人気投票になっている印象は否めない。
とはいえ、中にはマイナーな作品が受賞している部門も。たとえば、桜井氏が発案し審査委員長を務めるゲームデザイナーズ大賞では、『Steam』のみでリリースされているカードゲーム『Inscryption』が受賞。同作はインディーズゲームでありながら世界中で話題となり、一躍大ヒット作に登り詰めた。
ただ、同作の場合にもすでにヒットした作品が選ばれたという点は同じ。結局のところ、現在の「ゲームに与える賞」では、隠れた名作を評価することは難しいのだろう。
日本のゲーム業界には、小説や映画などと違って“批評”が存在しないと言われて久しい。みんなで空気を読み合うだけの業界を変えるには、世論と衝突することをいとわない優れた批評家が必要なのかもしれない。
文=「まいじつエンタ」編集部
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