『チェンソーマン』“生活保護”殺害で大荒れ! 藤本タツキの倫理観は幼稚なのか

『チェンソーマン』“生活保護”の描写で大荒れ! 藤本タツキの倫理観は幼稚なのか

『チェンソーマン』11巻(藤本タツキ/集英社)

最新話が更新されるたびに、さまざまな考察が飛び交う藤本タツキの『チェンソーマン』。9月26日に『ジャンプ+』で更新された第105話『灼熱』では、“生活保護”受給者の扱いをめぐって、意外な論争に発展してしまった。

※『チェンソーマン』最新話に触れています

「戦争の悪魔」ヨルが取り憑く三鷹アサに対して、自分がチェンソーマンであることを自白したデンジ。だが、デンジの振る舞いがあまりにダサすぎたたため、アサは信じようとしなかった。結局、アサとヨルのチェンソーマン探しは振り出しに戻ってしまう。

躍起になるヨルをたしなめ、アサは「コウモリの悪魔」に襲われて怪我を負った友人・ユウコのお見舞いに。仲睦まじく過ごす2人のもとに、思わぬところから「正義の悪魔」の影が忍び寄る──。

そこで物議を醸しているのが、「正義の悪魔」と契約を交わした人物の行動。生活保護を受け取りながらパチンコに通っていたという隣人を、正義感に基づいて殺害したようなのだ。

“不正受給”を仄めかすような一文もあるものの、「パチンコに通う生活保護受給者」をめぐる議論は、インターネット上では古くからお馴染みのテーマ。法的には何ら問題ないが、一部ネットユーザーが激しく批判したがる対象だ。

作者の倫理観に賛否両論

そんなテーマを「正義の悪魔」と関連させて持ち込んだことで、作者に対する不信感をあらわにする人も。ネット上では、《藤本タツキは幼稚すぎるだろ。なんだよ生活保護でパチンコしてる奴殺すとか》《そんなネットの陰キャ中学生みたいな正義でいいの?》《ネットでよく見る「生活保護貰ってるのに遊んでる」ってやつで普通にしんどくなった》《タツキはインターネットをやめてくれ!》と非難する声が広がっている。

しかしその一方で、「パチンコに通う生活保護受給者」をめぐるエピソードを社会風刺として解釈する読者もいるようだ。あくまで“正義の暴走”という描写だとして、《インターネットの正義を皮肉っているとしか思えない》《意外とタツキの倫理観信用できるかもしれないな》《正義の悪魔の異常性を演出してるだけ》といった意見が飛び交っていた。

実際に作中では、隣人殺害の理由を聞いたアサが愕然とする様子があり、単純な「正義」として描かれているとは考えにくい。問題は、キャラクターの行動を作者の思想として受け取ってしまう読者の方にあるのかもしれない。

読み切り作品『ルックバック』発表時にも、通り魔をめぐる“不適切な描写”によって修正騒ぎが生じたことが記憶に新しい。なにかと物議を醸すのは、現代社会のセンシティブな話題に正面から取り組んでいるからだろう。

とはいえ、リテラシーの欠如した現代の読者たちにその表現は受け入れられるだろうか…。

文=野木
写真=まいじつエンタ