楠木ともりに高野麻里佳まで…「歌って踊れる声優」時代が生んだ犠牲者たち

楠木ともりに高野麻里佳まで…「歌って踊れる声優」時代が生んだ犠牲者たち

楠木ともりに高野麻里佳まで…「歌って踊れる声優」時代が生んだ犠牲者たち (C)PIXTA

かつては裏方的な役職であり、表舞台に出る機会が少なかった“声優”という存在。今では時代が大きく変わり、歌って踊るアイドルとしての活動を求められるようになったが、その“負の側面”が浮き彫りになりつつある。

「声」以外も求められる現代の声優たち

人気声優・高野麻里佳は11月1日、「体調不良」を理由とした活動制限を発表。所属事務所『青二プロダクション』によると、担当医師より適応障害と診断されたため、当面は治療を優先するという。

高野といえば、大人気スマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』のサイレンススズカ役で一躍ブレイクした声優。しかし活動制限の影響により、11月5日・6日に開催される予定の「ウマ娘」初ドームライブ『4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! EXTRA STAGE』への出演も見送られることになった。

また、同日には『チェンソーマン』マキマ役で注目を集める声優・楠木ともりに関しても悲しいニュースが。代表作と言えるアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の中川菜々(優木せつ菜)役に関して、降板することが明らかとなったのだ。

2021年春頃より身体的な不調があったが、今年9月に医師より遺伝性疾患の診断を受けたとのこと。ダンスなどの身体に大きな負荷がかかる動作が難しいため、継続的なライブ活動に支障が出るとして、降板を申し出るに至ったという。

役者が過剰な負担を強いられる声優業界

今をときめく大人気声優たちのニュースに、声優ファンたちは騒然。その背景について、ネット上では、《声優さんの体調不良多くて心配。マルチタレント化しすぎてることが無関係とは思えない》《これも「声優」の実体がアイドル化しつつある影の部分だろうな。特に女性声優は今やダンスも必修科目になりつつあるし…》《色々やらせ過ぎなんだよ。今は声優という本業よりも、下手したらイベントの練習の方が多いんじゃない?》《一度業界全体で考え直してほしいレベルで声優さんたちが疲れてる》といった声が上がっている。

たしかに現在の若手声優は、アニメでの演技だけでなく、さまざまな活動を行うのが一般的。ライブイベントで歌やダンスを披露することを始めとして、ネット番組などでのトーク力、グラビア撮影やSNS上でのファンサービスなど、マルチな才能が求められるようになった。

今や売れっ子声優の負担は、人気アイドルと比べても遜色なく、その心身への負担は計り知れない。

背景としては、声優をたんなる役者ではなく、コンテンツの一部として提供しようという制作サイドの思惑がある。しかしそれに加担しているのは、ほかでもない消費者であるオタクたちだ。

手のひら返しで業界を叩くのではなく、声優たちの未来を真剣に考えるべきではないだろうか。

文=大獄貴司

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