空前のヒットを記録しておきながら、賛否両論のラストを迎えたSFヤンキー漫画『東京卍リベンジャーズ』。11月16日発売の『週刊少年マガジン』51号に掲載された最終話には、同作の漫画としての“本質”が表れていた。
※『東リベ』最終話の内容に触れています
最終話で描かれたのは、タケミチの結婚式に「東京卍會」のOBが集結するエピローグ的な展開。一見ハッピーエンドに見えるが、ここに至るまでの展開が強引だったこともあり、大荒れしてしまった。
また、原作ファンの間では「未回収の伏線が多すぎる」という意見も。黒幕のように立ち回った稀咲鉄太や半間修二も、行動原理や言動に曖昧な点が多いまま。そもそも、なぜタケミチはタイムリープができるのかも説明されず仕舞いだ。
とはいえ、そもそも同作においてタイムリープは重要な概念ではなかったのかもしれない。最終回直前では、10ページほどで超スピードのリベンジループが行われ、タケミチがマイキーと共に「東京卍會」にまつわる事件を爆速で解決。もはやタイムリープが舞台装置でしかなかったことは明らかだろう。
では一体何がこの漫画の本質だったのか。それは最終話のとある描写から読み取れる。次々と男性キャラクターたちが登場するのだが、なぜか左手が巧妙に隠されていたのだ。
結婚式は「東京卍會」解散から11年後の出来事なので、リアルに考えるとほとんどのキャラが結婚している年齢。しかし「東京卍リベンジャーズ」はイケメンキャラ揃いということもあり、女性人気が高かった作品だ。ファンを失望させないために、左手の結婚指輪を描かないよう、配慮していたのではないだろうか。
格ゲーじゃなかった「ジョジョASB」と同じ?
さらに手厳しいことを言えば、このような配慮は、同作がタイムリープSFではなく、あくまで“キャラクターもの”の漫画であったことを示すものかもしれない。
実際、結婚式では乾青宗の左手に指輪らしきラインが確認されており、ネット上が《え、待ってイヌピーの左手、結婚指輪?》《どこの女と結婚してんだよ!!》と大荒れしていた。同作を「キャラもの」として認識する読者が多かったのは事実だろう。
もちろん、その一方でストーリーに注視する読者も存在したからこそ、終盤の展開が賛否を招いてしまったのだろうが…。
ところで「思っていたジャンルと違う」という現象は、大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のゲーム版である『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』(ジョジョASB)と共通する部分がある。
「ジョジョASB」は発売前から「スタイリッシュ対戦格闘ジョジョアクション」と宣伝されていたが、いざ発売されると問題点が次々と発覚。作品の核となるはずの格闘システムも調整の甘さが目立ち、格ゲーではなく「ジョジョ」のネームバリューに頼った「キャラもの」だったことが明らかになった。
最近の漫画業界では一種の「伏線至上主義」がはびこっており、『進撃の巨人』や『ONE PIECE』などのように、隅から隅までしっかり伏線を張り巡らせた作風が高く評価されている。「東京卍リベンジャーズ」の良くも悪くも適当なクライマックスは、そんな風潮へのアンチテーゼになりうるものと言えるだろう。
しかし結果だけ見れば、「キャラもの」の領域を一歩も超えられなかった印象。これでは漫画業界の“全国制覇”は難しいのではないだろうか…。
文=野木
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