ゲームにおいてプレイヤーと共に生きる“主人公”は、作品の面白さを左右する重要な要素。どんなにゲーム性やグラフィックにこだわったゲームでも、主人公が共感できなかったり不快だったりするだけで、あっという間に楽しめなくなってしまう。
では、そんなゲームにおける「理想の主人公」とは、どんなキャラクターなのだろうか。
RPGにおける理想の主人公
一言で「理想の主人公」といっても、ジャンルやプレイヤーの趣向によって理想像はさまざま。たとえば「RPG」に関して良く言われるのは、主人公に自分を重ねてゲームを楽しむ「一人称型」か、映画を見るように俯瞰で物語を楽しむ「三人称型」のプレイヤーかで、主人公に求める要素は変わってくるようだ。
まず「一人称型」のプレイヤーが主人公に求める要素は、徹底的に無個性であること。究極系と言えるのが、「キャラメイク」で主人公を自由に作れるタイプのゲームだろう。この場合、 “なりきり”プレイで世界観に没入させてくれることが大切ということになる。
一方で、「三人称型」のプレイヤーが求めるのは、反対にどこまでも個性的で魅力がある主人公。具体的には『FINAL FANTASY VII』のクラウドや、『METAL GEAR』シリーズのスネーク、『NieR:Automata』の2Bなどが、理想的な主人公として良く挙げられている。
また太ももが大きな話題になった『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』のライザも、このタイプの主人公かもしれない。プレイヤーは最も身近なパートナーとして、主人公を“見て楽しむ”というわけだ。
ただ、基本的に1人の主人公を操作していくRPGとは違い、操作キャラクターに多数の選択肢がある対戦型のゲームでは事情が違ってくる。
対戦型ゲームにおける理想形は?
たとえば格闘ゲームでは、ビジュアルや性格だけでなく、キャラクターの性能的にもゲームを象徴するようなキャラクターが好まれるようだ。
とくに『ストリートファイター』シリーズのリュウは、その典型的な例。飛び道具や対空技に加え、通常技も癖の無い技が揃っており、初心者が格闘ゲームの基本を知るにはうってつけなキャラクターとなっている。
もちろんシリーズやバージョンによっては例外も存在するが、「ストリートファイターII」の主人公がもっとテクニカルなキャラだったら、おそらく2D格闘ゲームはあそこまで流行らなかったであろう。
実際に有名プロゲーマーのウメハラ氏は、自身の配信で、リュウがいかに格闘ゲームの主人公として優れているかを力説していた。「主人公が飛び道具を使えるのは卑怯に見るのでは?」との質問に、「攻めなきゃいけない前提がないんですよ、飛び道具がないと」と反論したのだ。
ウメハラ氏いわく、どちらかのキャラクターに飛び道具があるからこそ、もう一方のキャラクターに攻める理由が生まれ、2D格闘ゲームの対戦が面白いものになるのだという。そして「このゲーム(ストII型のゲーム)には飛び道具が無いとつまらない」ということを象徴するのが、リュウというキャラクターなのだそうだ。
普段プレイしているゲームにおいて、主人公がどのような役目を負っているのか注目してみるのも面白いかもしれない。
文=大上賢一
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