未だ終わりの見えないウクライナ侵攻の傍ら、ロシア国内では西側諸国のコンテンツを取り締まる動きが。とくに性的マイノリティが登場するゲームがやり玉にあがっているようだ。あまりに反時代的な動きだが、驚くべきことに日本のゲーマー界隈では賛成の声が上がっている。
規制される「LGBTプロパガンダゲーム」
今年10月、ロシア下院で同性愛などの情報を大幅に制限する、いわゆる「反LGBT法」が全会一致で通過。西側諸国のプロパガンダだとして、LGBTが登場するコンテンツを規制する動きが強まっており、同法案が成立すればLGBTが含まれるすべての表現物が規制の対象になるという。
ゲームも例外ではなく、法案を提出した議員の1人がリストアップした規制すべき作品の数は数十タイトルにも及ぶとのこと。その中には、『オーバーウォッチ』や『Apex Legends』、『ライフ イズ ストレンジ』、『アサシン クリード』といった日本で人気のタイトルも含まれている。
これらの作品を見てみると、10月にリリースされた「オーバーウォッチ2」では、トレーサーやソルジャーといったLGBTキャラが登場。また、「Apex Legends」も多くのキャラクターにLGBT設定があることでお馴染み。11月2日に始まったシーズン15で追加されたカタリストもトランス女性ということで、LGBTのキャラクターは総勢8人にのぼる。
ともあれ、いかなる内容であっても、国がコンテンツを検閲すること自体が問題。その上、性的マイノリティを狙い撃ちにするような方針を打ち出しているため、より根は深いと言えるだろう。
当然、世間的にはロシアの方針に批判の声が多く上がっている。しかしなぜか一部のゲーマーからは、《これはロシア側にも一理、いや10理くらいある》《ロシア嫌いだけどキャラの背景に多様性(笑)がついてるのも同じくらい嫌いだからナイスと言わざるを得ない》《最近のゲームで意味不明なほどLGBT描写を追加しまくるのも大分気持ち悪い》などと、賛意を示す声が上がっていた。
しかしこれは、害悪オタクたち特融のダブルスタンダードと言わざるを得ない。
日本にとっても対岸の火事ではない?
フェミニストによる批判が寄せられた際、オタク界隈では錦の御旗のように「表現の自由」が掲げられるのが常。しかし今回に関しては、明らかな「表現の自由」の侵犯にもかかわらず、賛同が集まるという矛盾が生じている。
また、LGBT描写に批判的な人々からは、「押しつけがましい」といった意見が上がることが多いのだが、日本国内で差別的な意識が強く残っていることも確かだろう。
たとえば今年8月には、過去に「同性カップルは生産性がない」といった差別的表現を行ったことで知られる自民党・杉田水脈議員が、総務大臣政務官に抜擢されることに。
11月9日の参院倫理選挙特別委員会では、あらためて過去の発言について謝罪と撤回を求められたものの、「配慮を欠いた表現」だったことを認めつつも、謝罪も撤回も行っていない。
ロシアの「反LGBT法」は、決して対岸の火事ではない。LGBT描写に反発するあまり、差別意識に追従しないよう、考え直してみる必要があるのではないだろうか。
文=「まいじつエンタ」編集部
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