『HUNTER×HUNTER』の世界において、「幻影旅団」は凶悪な集団として恐れられている。
彼らの悪行として、クルタ族の虐殺を思い浮かべる人が多いかもしれないが、その裏には“意外な真実”が隠されている可能性も浮上した。
※『HUNTER×HUNTER』本誌連載の内容に触れています
「幻影旅団」は、作中のヨークシン編で脚光を浴びた盗賊グループ。団長のクロロを“頭”として、強力な念能力者たちが集まり、裏社会で悪名を轟かせている。
しかし、今年11月発売の『週刊少年ジャンプ』51号に掲載された第395話『結成(1)』から数話にわたって描かれたエピソードで、彼らの印象がガラッと変わった。
395話から描かれたのは「幻影旅団」メンバーたちの過去だ。
流星街で暮らしていた幼少期の「幻影旅団」メンバーたちにある日、仲間が虐殺される悲劇が起こる。
そして、その復讐のために世界最大の悪役になることを決意し、「幻影旅団」結成に至ったという経緯が明かされた。
こうして浮かび上がった「幻影旅団」像は、これまでに読者が抱いていたイメージとは大きく異なり、「幻影旅団」のイメージを180度変えた。
そのため、クルタ族の虐殺も彼らが巻き起こした事件ではない可能性が浮上したのだ。
劇場版『HUNTER×HUNTER 緋色の幻影』の特典として配布された“0巻”の内容によると、クルタ族の最期はかなり凄惨なものだった。
「緋の目」を発現させるため、一族全員が、まるで拷問のような仕打ちを受けていたという。
だが、そもそも「幻影旅団」は復讐を果たすことと、流星街を守ることを目的に発足された集団であり、盗賊は手段にすぎない。
高額で取引されるという「緋の眼」が目的だったとして、何の恨みもない一族に拷問を加えるだろうか。
なにより注目すべきは、クルタ族の子どもたちを無残に傷つけ、親に見せ付ける仕打ちが行われていたこと。
これは流星街で起きた悲劇と瓜二つであり、やはり「幻影旅団」の所業とは考えにくい。
「例のあの発言」が大逆転する可能性も…?
さらに検証を進めてみよう。ヨークシン編において、クラピカが憎き「幻影旅団」のウヴォーギンと対峙した際、クルタ族の虐殺について尋ねている。
そこでウヴォーギンは「ありゃあ大仕事だった。あいつら強かったな…」と語っており、クルタ族の戦闘力を知っている様子だった。
また、パクノダやフェイタンからも、「緋の眼…思い出した。目が赤くなる連中ね」「生き残りがいたということか」といった発言が。
少なくともクルタ族が全滅したことについては、知っていたのだろう。
とはいえ、こうしたセリフは「幻影旅団」がクルタ族を虐殺したことを証明しない。
何らかの形で戦闘があり、その後一族の全滅を知ったとしても、自らの手で一族を滅ぼしたとは限らないからだ。
なお、0巻によると、クルタ族虐殺の現場には「我々は何ものも拒まない」「だから我々から何も奪うな」というメッセージが残されていたそう。
流星街から送られる有名なメッセージなので、第三者が罪をなすりつけようとした結果とも考えられる。
当時、クルタ族との戦闘を経験していたであろう「幻影旅団」は、格好の冤罪相手だったのかもしれない。
その一方、議論をより複雑にするのがシーラの存在だ。
流星街出身でありながら、幼きクラピカたちと交流し、その後、失踪した謎めいた女性である。
クルタ族の者がシーラを手にかけ、その復讐のために「幻影旅団」が凶行に及んだ…という可能性もなくはない。
ことの真相次第では、レオリオ最大の問題発言とされていた「うす汚ぇクルタ族の血」が事実となる可能性もあり得るのが恐ろしいところ。
この先、どんな真実が待っているのだろうか。
文=富岳良
写真=まいじつエンタ