2022年10月にTVアニメ化され、いろいろな意味で話題沸騰となった漫画『チェンソーマン』。その流れに逆らうように、作者・藤本タツキを信奉するファンたちの間で、連載デビュー作『ファイアパンチ』を持ち上げる運動が広まっている。
「チェンソーマン」人気に嫉妬?
「ファイアパンチ」は、『少年ジャンプ+』で2016年から約2年連載されていたファンタジー漫画。
消えない炎に苦しみ、復讐に生きる男・アグニを主人公として、ダークでグロテスクな世界観が描き出された。
その後、花開くことになる“タツキワールド”の原点であり、連載当時も大きな話題を呼んだのだが、終盤にかけて「迷走している」といった声も。
「チェンソーマン」にも増して、賛否両論が真っ二つに割れる作品だ。しかしだからこそ、熱狂的なファンの数も多い。
世間的な知名度で「チェンソーマン」が圧倒的になったことに対して、《世の中の人間がファイアパンチよりチェンソーマンを評価しているのはよくわかりませんわ》《ファイアパンチのほうが肌に合う感覚がある》《ファイアパンチのほうが百倍おもしろいということを、永遠に伝えていきたい》と不満げな声が上がっている。
「MAPPA」に期待の眼差し
さらには、「チェンソーマン」のヒットをきっかけとして、「ファイアパンチ」のアニメ化を熱望する人も。
《チェンソーマンが流行ったらファイアパンチもアニメにしてほしい》《チェンソーマンのこの勢いでファイアパンチ3巻までを映画化してくれない?》などと、「ファイアパンチ」ブームの萌芽が芽生えている。
ちなみに「チェンソーマン」は、アニメ制作スタジオ「MAPPA」の100%出資によって制作された。
企業から出資を募る「製作委員会方式」ではないため、同じく「MAPPA」単独出資であれば、アニメ化のハードルは高くないかもしれない。
さらに、2022年8月に海外メディア『IGN France』が行ったインタビューでは、「MAPPA」が“藤本タツキ作品をすべてアニメ化したい”といった意向を示していた。
もう1つの長編作品である「ファイアパンチ」に夢が広がるのも、無理はないだろう。
だが、「ファイアパンチ」は度重なる迷走によって、アンチを大量に生んだ名作でもあり、迷作でもある。
ただでさえ「チェンソーマン」のアニメ化が賛否を巻き起こしている中、次なる挑戦作に選ぶのはリスキーかもしれない。
藤本といえば、むしろ『ルックバック』『さよなら絵里』といった完成度の高い読み切りこそが真骨頂とも言われている。
はたして「MAPPA」の選択はいかに…。
文=野木
【画像】
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