現代のレースゲームといえば、現実と見まがうような美麗グラフィックのものばかり。しかし描画に限界があった初代プレイステーションの頃には、発想の面白さで勝負した作品がいくつも存在した。今回はとくに人気が高い“怪作”を3つご紹介しよう。
<その1>『激走トマランナー』
1999年に発売された『激走トマランナー』は、“止まらん”という日本語と、“ランナー”という英語をかけ合わせた駄洒落タイトルの作品。
タイトル通り、人間が走って先着を競うという異色すぎるレースゲームだった。
人間が並んで疾走するという絵面からしてシュールなのだが、ゲーム内容もかなりのおふざけっぷり。とにかく相手より先にゴールすることが正義とされ、相手を殴るのはもちろん、武器や爆弾を使用することもできる。
厳密には使用キャラは人間だけでなく、カッパやてんし、モーターマンといった多彩な顔ぶれ。それぞれ異なるパラメーターや技が備わっており、対戦モードを熱くしていた。
通常のレースゲームとは違って、コースには障害物などがてんこ盛りとなっているのも大きな特徴。「跳び箱」などを上手く飛び越えるなど、斬新な体験を味わえる。
さらに同作には、L’Arc〜en〜Cielと全面的にコラボした『激突トマラルク』という続編も。
いずれもたんなるネタゲーではなく、異様なほどに完成度が高いため、いまだに熱烈なファンが多い。
<その2>『チョコボレーシング ~幻界へのロード~』
チョコボといえば、国民的RPG『ファイナルファンタジー』シリーズに登場するキャラクター。初代プレステではそんなチョコボたちが激しいレースを繰り広げるという、全FFファン垂涎のレースゲーム『チョコボレーシング ~幻界へのロード~』も発売された。
当時は『チョコボレーシング』というタイトルから、プレイヤーは全員チョコボを操作することになる…と考える人も多かったが、それは誤解。モーグリや黒魔道士、白魔道士など、おなじみの面々がレーサーとして多数登場している。
実際にはFFオールスターレースと呼んでも過言ではない豪華さで、ファンを虜にした。
もちろん、レースゲームの作り込みもお見事。アイテムで補助・妨害などを行えるという点で『マリオカート』のパクリ…もといオマージュにも思われるのだが、必ずしもそうとは言えない。
各キャラクターに特殊能力「アビリティ」が用意されているなど、オリジナリティもしっかりある。
そもそもチョコボ自体、当時は圧倒的な人気を誇ったキャラクター。初代プレステでは『チョコボの不思議なダンジョン』『チョコボスタリオン』などの外伝ゲームが次々と発売され、『月刊コロコロコミック』ではチョコボとモーグリを主人公にした漫画まで連載されていたほどだ。
「チョコボレーシング」のファンが多数生まれたのも、当然のことだろう。
<その3>『クラッシュ・バンディクー レーシング』
1999年発売の『クラッシュ・バンディクー レーシング』は、PS初期の看板キャラクター、クラッシュ・バンディクーを主人公としたレースゲーム。「チョコボレーシング」と同じく、アイテムありの“マリオカート的レースゲーム”だ。
しかし同作もしっかり差別化されており、レースゲームとしての魅力は十分。
本編『クラッシュ・バンディクー』シリーズと同様、大人でも手応えを感じる難易度がウリとなっていた。
とくに「ドリフト」と「ターボ」周りのシステムは自由度が高く、その気になればコースほぼ全てをドリフト走行することも可能。初心者と経験者の腕に差が出る、やりこみ向きのゲームとなっている。
プレイするほどに上手くなり、タイムが縮むため、多くの熱心なファンを生んだ。
隠しコースやショートカットも多く、下手をすると初心者が1周する前に経験者が3周を終えてしまうことも。だが、そんな実力派プレイヤーでも、“堂々とフライングをする”ラスボス・エヌ・オキサイドには苦労させられるという、とんでもない難易度のゲームだった。
今ではお目にかかれないほど、アクの強い作品が揃っていた初代プレステのレースゲーム。リアル志向では得られない面白さもそこにはたしかに存在したはずだ…。
文=Tら
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paffy / PIXTA