ジャンプ新人漫画家たちのガチンコバトル勃発! 新連載が“共倒れ”してきた歴史

ジャンプ新人漫画家たちのガチンコバトル勃発! 新連載が“共倒れ”してきた歴史

ジャンプ新人漫画家たちのガチンコバトル勃発! 新連載が“共倒れ”してきた歴史 (C)PIXTA

ほかの週刊漫画誌と比べて、『週刊少年ジャンプ』は連載作品の入れ替わりが激しいことで知られている。次々と新連載が掲載されるため、作品同士の“ジャンルかぶり”が発生することも珍しくない。

そしてそんな状況下では、ジャンルのかぶった作品が共倒れしたり、1作だけが生き残ったりと、過酷な生存競争が繰り広げられてきたという。

打ち切りの運命を共に…

同時期に同じジャンルの新連載が掲載されるということは、趣味が近い読者からの人気が分散することを意味する。当然、読者アンケートの票も分かれるため、打ち切りの可能性も高くなるだろう。

とくに「ジャンプ」でよく起こるのが、スポーツ漫画のジャンルかぶりだ。日本がワールドカップに湧いた2010年頃には、附田祐斗の『少年疾駆』、村瀬克俊の『DOIS SOL』、神海英雄の『ライトウィング』と、サッカー漫画の新連載が立て続けに始まった。

しかしサッカー人気に便乗することはできなかったのか、結果はどれも20話前後で打ち切り。厳密に言えば連載時期が被っていたわけではないが、次々と連載のバトンを渡していった挙句、全滅した形だ。どうにかしてサッカー漫画でヒットを生み出そうとした編集部の執念を感じさせる。

また2018年には、同じ号で2本のギャグ漫画が連載スタートするという奇妙な光景が繰り広げられた。その作品とは、林聖二の『ジモトがジャパン』と、黒木雄心の『思春期ルネサンス!ダビデ君』だ。

このうち「ジモトがジャパン」は、連載から約3カ月でアニメ化が発表され、一見大ヒット作への階段を登っているようにも見えた。しかし2作品ともに全35話で、あえなく打ち切りに。なぜか完結すらも同じ号で、悲しい運命を共にした。

蠱毒を生き残った大ヒット作

他方で、同時期にジャンルかぶりに見舞われつつ、1作品だけ生き残るというパターンも少なくない。こうした新連載の“蟲毒”を行き抜いた作品は、ほとんどが長期連載へとこぎつけている。

たとえば、2009年2号から連載が始まった藤巻忠俊の『黒子のバスケ』が代表的な例だろう。実は同作の連載スタートと同時期、2009年14号から同じバスケ漫画である川口幸範の『フープメン』が掲載されていた。

この2作品はジャンルだけではなく、ダブル主人公という題材でも被っている。しかし異能力バスケとリアル路線という大きな違いがあり、「黒子のバスケ」はご存じの通り大ヒット作になった。

また、2012年はラブコメ漫画が群雄割拠した年だ。古味直志の『ニセコイ』、原作・坂本次郎、漫画・ミウラタダヒロの 『恋染紅葉』、濱田浩輔の『パジャマな彼女。』がデッドヒートを繰り広げ、結果としては「ニセコイ」の1人勝ちとなった。

さらに広いジャンルで括れば、2014年はスポーツ漫画のバトルロワイヤル状態だったと言える。川田の『火ノ丸相撲』、近藤信輔の『ジュウドウズ』、久保田ゆうとの『Sporting Salt』、古屋樹の『卓上のアゲハ』といった新連載が掲載されたが、それぞれ相撲・柔道・スポーツ医学・卓球を題材とした作品だ。

しかし当時軌道に乗っていた「ハイキュー!!」に人気を奪われたせいか、「火ノ丸相撲」以外の3本は、20話前後で打ち切られている。

ちなみに現在の「ジャンプ」でも、総合格闘技をテーマとした川田の新連載『アスミカケル』と、雲母坂盾のボクシング漫画『ドリトライ』が同時期に始まった。令和に勃発した同ジャンル作品の激突は、どんな結果に終わるのだろうか。

文=野木

【画像】

StudioRomantic / PIXTA