タイトルが「なろう化」された小説に賛否両論!?「チープな印象が拭えない」

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「完成した作品のタイトルは作者が決めるもの」と考えている人は多いだろうが、出版業界ではそうとも言いきれないらしい。最近ではとある小説のタイトル改変をめぐって、ネット上で激論が交わされているようだ。

話題を呼んでいるのは、「第8回ハヤカワSFコンテスト」で優秀賞に選ばれた『電子の泥舟に金貨を積んで』という作品。同作の編集者は今年10月、自身のTwitter上で、著者と議論した結果“改題”に至ったことを紹介した。改題後のタイトルは『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』。ライトノベルの人気ジャンルである“なろう小説”に通じるような、内容を端的に表したタイトルとなっている。

原題の持つ詩的な雰囲気を排除したタイトル変更に、ネット上では《往年のSF読者ですが原題のほうが読みたくなります。話題性を優先するとチープさが目立つので、使い捨てのように見えて残念》《新タイトルは目を引くかもですが、チープな印象が拭えないように感じました》《なんとなく内容が想像できるので、読まなくていいかと思ってしまう》《原題だったらカバーかけないけど、改題後はちょっとタイトルを隠したくなりますね》といった辛辣な意見が続出。

しかし逆に内容の伝わりやすさや話題性を評価する人も多く、《元のタイトルの方が綺麗だと思うけど、読みたくはならないかな…》《ラノベみたいだけど、埋もれた名作になってしまってはしょうがない》《売れなきゃ意味ないし、こうして話題になってるのだからある意味正解の1つ》などと擁護されていた。

さらに極端な例も…

編集者がタイトルを改変した例は過去にもあったようだ。中でも一際目を引くのが、「小説家になろう」発のライトノベル『異空のレクスオール』。こちらは『最弱ランク認定された俺、実は史上最強の神の生まれ変わりでした~お姉ちゃん属性な美少女との異世界勝ち組冒険ライフ~』と約9倍の長さに改題され、角川スニーカー文庫から出版されることに。

同作のタイトル変更はSNS上で大きな話題を呼び、《失礼ながら改題に笑ってしまった》《こうしないと本屋で手にとってもらえないのかなぁ。長いタイトルブームが去った時どうなるんだろう》《せっかくなろうっぽさを低減したタイトルだったのに、5割増しくらいの改題食らってるのは何だかなぁ…》など、さまざまな反響を呼んでいた。

その一方、大森藤ノの人気ライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』はイレギュラーな成功例だと言える。同作は『ファミリア・ミィス』というタイトルで「第4回GA文庫大賞」の大賞を受賞し、出版に至った作品。しかし編集部の判断によって、元々小説投稿サイトで公開されていた時と同じ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』へと“再改題”され、大ヒットに至っている。

より良い作品を作りたいクリエイターと、より売れる作品に仕上げたい編集部の思惑はいつの時代も食い違うもの。お互いに歩み寄りつつ、折り合いを付けていくしかないのだろう。

文=大上賢一

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