『FF16』はなぜ失敗したのか? シリーズ復活を左右する“萌えヒロイン”の存在

『FF16』はなぜ失敗したのか? シリーズ復活を左右する“萌えヒロイン”の存在

『FF16』はなぜ失敗したのか? シリーズ復活を左右する“萌えヒロイン”の存在 (C)PIXTA

スクウェア・エニックスが満を持してリリースした『ファイナルファンタジー16』(以下、FF16)だが、FFシリーズのファンからは酷評の声も聞こえてくる。売上本数も、前作を下回るペースとなっているようだ。

なぜ同作は、往年のファンたちの心をつかむことができなかったのだろうか。

『FF12』から始まった路線変更

『FF16』は、シリーズ伝統の「クリスタル」と「召喚獣」を中心に据えたストーリー。莫大なエネルギーを持つ「マザークリスタル」を奪い合う人類の戦いに、ロザリア公国の王子・クライヴが巻き込まれていくという骨太な展開だ。

大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の影響を感じさせる部分もあり、硬派なファンタジーを求めていた人々からの評価は低くない。しかしその一方、ヒロインにあたるジルの存在感が薄く、キャラクターが立っていないという指摘も多い。

硬派な作風にするために、いわゆる“萌え”とはかけ離れたキャラクター性を目指したのかもしれないが、それは諸刃の剣とでも言うべき戦略だろう。

というのも、魅力的なヒロインの存在はFFシリーズの人気を支える大きな要素の1つだ。逆にファンから酷評されるようになった『FF12』以降のタイトルは、ヒロインを重視しない作風が共通している。

「FF12」は群像劇であり、メインヒロインポジションのアーシェと主人公が結ばれないという異色の設定。続く『FF13』は女性主人公・ライトニングの物語で、ラブストーリーの要素が薄かった。『FF15』に至っては、ヒロインであるはずのルナフレーナの出番がほとんど作中に存在していない。

ヒロイン人気にあやかった過去

そもそも、FFシリーズの全盛期を作った『FF7』は、ヒロインの魅力を強く打ち出した作品だった。片やグラマラスな幼馴染みキャラのティファ、片やミステリアスで魔性の気があるエアリスと、ダブルヒロインのような設定だ。

さらに2人だけでは飽き足らず、ほかにもヒロインを登場させた上、デートイベントまで用意するという“ギャルゲー的”な方針。それが功を奏したのか、いまだに同作のヒロインたちには熱狂的なファンが存在しており、「FF7」が高く評価される理由の1つとなっている。

そして、二度目の全盛期にあたる『FF10』も恋愛要素が強いタイトル。過酷な運命のなかで繰り広げられる、ユウナとティーダの壮大なラブストーリーだった。ユウナがヒロインとして熱烈な支持を集めていることは言うまでもないだろう。

おそらくFFシリーズの人気が下火になった理由として、魅力的なヒロインを描けなくなったことは大きな影響を及ぼしている。

他方で現在、日本産のRPGとして世界中で高く評価されているタイトルといえば、『ペルソナ4』や『ペルソナ5』などが挙げられる。いずれも個性豊かなヒロインを多数用意し、ギャルゲー的に恋愛できるシステムとなっているのが特徴だ。

「ペルソナ」シリーズはもともと硬派な作風だったが、ギャルゲー要素が強くなってから、大ブームを巻き起こした。FFシリーズを復活させるためには、同じように硬派な作風を捨てる勇気が必要なのではないだろうか。

文=野木

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