映画『PERFECT DAYS』賛否真っ二つ! 巨大資本で作られた“ニセモノの日本”に違和感の声も

(C)marcello farina / Shutterstock

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12月22日に公開された映画『PERFECT DAYS』が物議を醸している。作品制作の背景に大資本が絡んでおり、懐疑的な声も多い。

『PERFECT DAYS』はドイツ出身の巨匠であるヴィム・ヴェンダースが監督を務め、東京を舞台にトイレ清掃員・平山の日常を映像化した作品。第96回アカデミー賞で国際長編映画賞の日本代表に選ばれたほか、平山役を演じた役所広司が第76回カンヌ国際映画祭の最優秀男優賞に輝いている。

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12月25日発表に発表された、興行通信社の全国週末興行成績では、公開館数158ながら初登場9位にランクイン。ヴィム・ヴェンダース作品、役所のカンヌ受賞作品ということもあり、注目度が高いことが伺える。

しかし、映画ファンの中には素直に映画を楽しめなかったとする声も多い。一体なぜなのだろうか。

「『PERFECT DAYS』は『THE TOKYO TOILET』の公共トイレを題材に制作されている。このプロジェクトの発案者は『ユニクロ』で知られるファーストリテイリングの取締役・柳井康治氏。代表取締役会長兼社長である柳井正氏の次男です。また、共同制作者には電通グループのグロースオフィサーの名前も。つまりバックに大手企業が関わっているのです」(映画ライター)

「全てが嘘くさい」「本当に大切な一本」

『PERFECT DAYS』の配給会社は、クリストファー・ノーラン監督による『オッペンハイマー』(2024年公開)の配給も担当するビターズ・エンド。あまり耳馴染みがない配給会社かもしれないが、渋谷のスクランブル交差点に面した街頭看板で『PERFECT DAYS』を大々的に宣伝していた。

「役所演じる平山はスカイツリーが見える下町に住み、カセットテープで昔の音楽を聴き、フィルムカメラで日常を撮影するなど、現代日本人の価値観との〝ズレ〟を強調する場面が多い。しかし、平山が掃除するトイレに関しては、汚い公衆トイレではなく、洗練された『THE TOKYO TOILET』の公衆トイレばかり。

作品全体を通して、どこか郷愁的で退廃的なムードが漂っているのですが、大資本をバックに小津安二郎フォロワーである巨匠を引っ張り出し、古き良き素晴らしさのような空気感を醸し出して作品化することには違和感がある。作品のコピーである『こんなふうに生きていけたなら』に露悪的なものすら感じました」(同・ライター)

映画ファンからは《巨匠ヴェンダースに金を与えて、新自由主義の「日本」らしさを演出させる困った映画》《無菌化された画面に映る全てが嘘くさい》《無口サブカルおじさんのお洒落トイレ博覧会》《こんなにも愛おしい気持ちにさせられた映画は初めて》《こんなにいい映画だったとは…本当に大切な一本になりました》《この映画を観て感動できなくなったら、それこそおしまいだろ》と賛否の声が上がっている。

この映画をどのように捉えるかは、観る人の環境によって変わるのかもしれない。

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