松本人志は本当に面白かったのか?“笑いの基準”を作った天才は作られたカリスマなのか、本物のスターなのか

松本人志 画/彩賀ゆう (C)まいじつ

一連の不同意性交疑惑以降、ダウンタウン松本人志に「人気だから声を上げづらかっただけで、以前から〝松本的笑い〟が苦手だった」という意見が多く上がっている。

ダウンタウン、ひいては松本が〝お笑い界のトップ〟として扱われていることは、芸能界や世間一般でも広く知られていることだろう。

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日本のエンタメ史を紐解いても、「ダウンタウンがお笑い界を変えた」というのが定説で、『M-1グランプリ』の審査員紹介では、松本の登場時に「漫才の歴史は彼以前と以降に分かれる」と紹介されている。

だが、これらは〝作られたもの〟にすぎないとの批判もある。昨年、後輩ながら松本に牙を向いた、オリエンタルラジオ中田敦彦は、この問題を正面から論じた。

中田は自身のYouTubeで、コント、漫才、大喜利といったあらゆるジャンルの審査員を松本が務めていることに触れ、「全部のジャンルの審査委員長が松本人志さんという、とんでもない状況なんですよ。他の業界だったら信じられないぐらいの独占状態」と指摘した。

続けて「松本色が濃すぎてお腹一杯になっちゃっている」などとコメント。本来ならば松本個人のセンスにすぎないものが、お笑い界のスタンダードとされ、〝松本的な笑い=面白い〟になっていることを批判した。

この意見は、松本の先輩である立場からも指摘されている。

1月18日、『ますだおかだ増田のラジオハンター』(ABCラジオ)に出演したベテラン漫才師・西川のりおは、松本のスキャンダルについてコメント。その中で「カリスマというのも作ったものなんよ」と、松本に対する評価をバッサリと斬った。

スキャンダル直後の昨年12月30日にも、脳科学者の茂木健一郎氏が、自身のXとYouTubeで「『お笑いの天才』というキャラ設定になってる」「人志松本が言ったらとにかく全部笑うと」「絶対に周りが笑ってくれるんで、人志松本はすべらない」とズバリ。

「みんな取り巻きの後輩芸人たちが盛り上げてくれる」「松本人志さんが裸の王様だってことを言わない」など、一刀両断している。

これらの意見はいずれも「松本的な笑いが〝面白い〟とされているが、果たして本当なのか?」と、お笑い界の価値観に根底からの疑問を投げかけるものだ。

実際、松本が映画監督として失敗し、興行収入のみならず、内容も酷評されている点から、彼のセンスに疑問が残るところはあるかもしれない。

NSC1期生が大ブレークという都合のいい展開

このように、本来は疑問のある松本のセンスが、なぜ「お笑い界のスタンダード」「絶対的価値観」かのように広まっていったのか。

もちろん、彼の笑いが前衛的で、世の中を魅了したのは間違いない。しかし、それとともに巨大事務所の力を使ったゴリ押しも考えられるという。

「ダウンタウンが出始めた頃はネットがなく、テレビや雑誌などのマスメディアがすべてだった。吉本が多くの番組にねじ込めば『たくさん露出がある=面白い』という認識になりやすい。このメディアコントロールは、ダウンタウンが現在の地位を占めるようになった大きな一因でしょう」(芸能ライター)

吉本がなぜダウンタウンをゴリ押ししたのかは、〝養成所ビジネス〟というビジネス面の発想からだという。

「かつてのお笑い界は、師匠を見つけて弟子入りするのがスタンダードだった。吉本はそんな時代において、お笑い養成所・NSCで芸人育成を始めました。ダウンタウンは何を隠そう、NSCの1期生。吉本としては『養成所ビジネスを軌道に乗せるため、1期生からブレーク芸人を出し、入学者を増やしたい』という狙いがあったのです。そこで目をつけたのがダウンタウンということでしょう」(ベテラン芸能ライター)

実際、ダウンタウンのブレークで志願者が増加し、NSCは安定した会社にとって大きな収入源に。後に東京校や福岡校まで拡大したほか、他事務所もビジネスモデルを真似、今では弟子入りよりも養成所を出ることがスタンダードになった。

「養成所は学費で儲けられる上に、芸人がブレークすれば、事務所にお金が入る。売れなくても事務所は困りませんし、学費と売れっ子候補が毎年入るシステムです。吉本としては軌道に乗せたかったでしょうし、第1号たる1期生を広告塔にする意図があったのは間違いないでしょう」(お笑い評論家)

養成所という安定した収入源のため、ダウンタウンをゴリ押し、まるで天才かのように祀り上げる…。いわばダウンタウンという存在自体、〝養成所ビジネスのための広告〟でしかなかったのかもしれない。

今回の騒動を機に、ソーシャルメディアでは《パワハラ・セクハラ芸は昔から嫌いだった》《松本信者は松本人志の笑いを評価しているのではなく、松本人志という教祖を崇拝してる》《みんな顔色伺ってるし、忖度してるのが伝わってくる》《吉本興業が冠番組を持たせたり、全面バックアップで東京に売り込んだだけ》といった指摘は多い。

もちろん、ダウンタウンの2人に実力やカリスマ性があってこそ、ビジネスモデルが実現したことは間違いない。〝天才〟の今後やいかに…。

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