松本人志は追及せず、ジャニーズは“嘘つき”のレッテル 日本エンタメを揺るがす2つの騒動は何が違うのか?

松本人志 

松本人志 画/彩賀ゆう  (C)まいじつ 

『ダウンタウン』松本人志の性行為強要問題で、被害の告発者が日に日に増えていっている。

発端となった『週刊文春』では、これまでに7名もの女性が性被害を告発。SNSでも、ピアニスト兼ミュージシャン、元セクシー女優、元グラビアアイドルの料理研究家などが被害を訴えているほか、実業家が知人の証言を告発するなど、被害者は相当な人数にのぼると見られている。


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そしてこの件、多くの性被害者を生んだという点において、昨年のジャニーズ性加害問題と重ねる声が多い。しかし、お笑い界やお笑いファンの反応は驚くほど異なる。

「ジャニーズ問題をめぐっては、矛盾のある証言や発言の変遷なども、メディアが検証せずに取り上げてきました。多くのジャニーズファンは、その対応に検証を求めたほか、証言のみなので、司法を通すように要求。しかし、これらの意見は〝被害者への誹謗中傷〟といわれることも多かった」(旧ジャニーズライター)

現在、松本からの被害告発者に「司法を通せ」「金目当て」「今さらの告発」といった言説が大量に飛び交っている。ともに証言のみで証拠はなく、時間が経ってからの告発で、司法を通さず、マスコミを使った告発にもかかわらず、その反応は正反対なのだ。

Xで「松本 エンタメ」などと検索すると、〝松本人志がいないエンタメなんて考えられない〟〝テレビのエンタメが終わる〟〝日本のエンタメに対するテロ〟といった意見が多数確認できる。

これらの意見はジャニーズ騒動の際、ファンが声を上げた言説と全く同じと言っていい。彼女・彼らもまた、ジャニーズが長年エンタメ界のトップに君臨してきたことから、業界への打撃を危惧していた。

批判した論法がそっくりそのままブーメラン

タレントへの反応もおかしい。12月29日放送の『ワイドナショー年末ゴールデン生放送SP』(フジテレビ系)で、今田耕司は「小説読んでるみたい。僕が知ってる松本さん、小沢(一敬)くんがとても言うとは思えない」「僕は記事に書いてあるようなことを生で見て聞いたことはないです」などとコメント。この証言を基に、松本ファンは無実や記事の捏造を主張。松本擁護の武器とした。

だが昨年のジャニーズ問題では、性加害について知らなかった・見たこともないと証言したタレントに「嘘つき」といった誹謗中傷が殺到。『KinKi Kids』堂本光一が会員制ブログで《自分の知っているジャニーさんと違いがありすぎて何が真実でどう受け止めればいいのか》《彼の裏の顔を信じたくない気持ちも正直あります》とつづったが、グルーミングや洗脳、隠蔽加担との憶測・中傷が吹き荒れたのは記憶に新しい。

「文春」の記事では『クロスバー直撃』渡邊センス、たむらけんじ、『パンクブーブー』黒瀬純ら吉本芸人の〝アテンド〟なるお膳立てが告発され、過去のトークイベントでは『博多華丸・大吉』博多大吉が、松本や先輩芸人のために女性を集める役を15年ほど務めていたと自ら告白。ジャニー喜多川氏が単独で動いていたとされる疑惑とは異なる。

ジャニーズタレントやファンは「性加害を容認しながら事務所を支えてきた共犯」とまで糾弾されたが、吉本興業やお笑いファンへこのような反応はほぼ上がっていない。

ジャニーズ問題では「噂には聞いていた」という関係者・ファンも多く、これが後に「噂で知っていたのに止められなかった」「噂で知っていたのに見て見ぬ振りをした」といった批判に繋がった。

これもまた同様で、吉本芸人がテレビで武勇伝のように〝飲み会伝説〟を語っていたことでもある。

こうした批判に対して必ず起こるのが「裁判で認められたジャニーズと松本は違う」との言説だが、これも事実は異なる。それどころか、この論法は今後、松本の首を締めかねない。

「なぜか勘違いされているが、文春とジャニーズの裁判では名誉毀損が認められ、ジャニーズ側が勝訴している。性加害についても〝事実認定〟ではなく〝真実相当性〟で、平たく言えば『証拠はないけど証言から〝真実〟と判断するに足りる』との司法判断です。

そしてこの争点は、今後、松本の裁判でも彼に不利に働くでしょう。7名超の証言によって『真実相当性があると判断できる』と認定される可能性もあります」(前出・ライター)

令和に入り、日本のエンタメ構造が変化しているのは間違いない。

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