『ONE PIECE』“ワノ国編”最終話で差別表現…終わらない差別の図式に読者モヤモヤ

『ONE PIECE』“ワノ国編”最終話で差別表現…終わらない差別の図式に読者モヤモヤ

『ONE PIECE』103巻(尾田栄一郎/集英社)

8月22日発売の『週刊少年ジャンプ』38号に掲載された『ONE PIECE』の最新話で、約4年にわたって続いた「ワノ国編」がついに終幕。しかし最後の最後で思わぬツッコミどころが浮上してしまい、モヤモヤする読者が続出しているようだ。

※『ワンピース』最新話の内容に触れています

第1057話『終幕』では弁士によって、ワノ国で起きた出来事が講談調で語られることに。光月おでんの家臣たちによる忠義の物語として、賊党たちが「龍王カイドウ」を倒したことなどを振り返っていく。

そして講談における一番の盛り上がりは、やはり黒炭オロチの最期だった。傳ジローに首を落とされ、恨み言を吐きながら燃え尽きていくオロチに、光月日和は「燃えてなんぼの“黒炭”に候」と言い放ったという。

この言い回しは、おでんが処刑される際に発した「煮えてなんぼのおでんに候」という名言にかけたものだろう。おでん処刑の首謀者であり、ワノ国を長年苦しめてきたオロチに対して、おでんの娘である日和が引導を渡す…という勧善懲悪の図式だ。

日和の決めゼリフを聞いたワノ国の庶民たちは歓声を上げ、そのまま大団円といった雰囲気で「ワノ国編」は終幕に至る。しかしこの結末をめぐって、読者からは《いうほど美談か? 邪悪すぎないか?》《これ黒炭家への迫害を助長させないか? 第二、第三のオロチが出てくるような》《何も学んでいない》《ワノ国の民、最悪すぎない?》《今後も黒炭の子孫への差別は続くんだろうな…》《これで大受けしてるワノ国の民、ドレスローザ国民並だろ》といったツッコミが相次いでいる。

なぜ「燃えてなんぼの“黒炭”に候」が問題なのかというと、過去の過ちから全く学んでいないように見えるからだろう。そもそもオロチが悪逆非道な独裁者になったのは、ワノ国の民への復讐心が原動力だった…。

ワノ国は同じ歴史を繰り返すのか

かつて黒炭家はワノ国の大名だったが、オロチの祖父が大名殺しの罪を犯し、家は断絶。オロチを含む黒炭家の生き残りは苛烈な迫害を受け、悲惨な最期を迎えることに。この経験から、オロチは壮絶な恨みを抱くようになった。

発端はオロチの祖父による過ちだったが、ワノ国の人々は黒炭家全体を迫害し、復讐者を生んだ。そして今回の騒動では、オロチ個人の過ちにもかかわらず、やはり「黒炭」の名が悪として糾弾されている。完全に同じ歴史を繰り返していると言えるだろう。

もし黒炭家の生き残りがどこかにいたならば、迫害によってふたたびオロチのような無敵の復讐者が生まれてしまうかもしれない…。

しかも直前のエピソードでは、似たような善悪の構図が描かれたばかり。「世界政府」加盟国と非加盟国の差別構造を肯定する海軍大将・緑牛が、ワノ国に来襲し、モモの助たちがそれを打ち破る展開となっていた。そこで反差別の方針をハッキリさせたかと思いきや、最後にふたたび“黒炭差別”を持ち込んでしまった形だ。

暗黒の時代を終わらせたワノ国だが、迫害と復讐の連鎖を断ち切ることはできるのだろうか。

文=「まいじつエンタ」編集部
写真=まいじつエンタ