ひと昔前は、どれだけの人気原作でもアニメ化の際に、オリジナルストーリーをてんこもりにされることが多かった。『週刊少年ジャンプ』でもそれは例外ではなく、さまざまな作品が犠牲になっている。
今回はそのなかでも、最終回付近の展開で原作者といざこざが起きた、いわくつきのアニメを紹介しよう。
<その1>原作者が逃亡?『約束のネバーランド』
『約束のネバーランド』は、原作・白井カイウ、作画・出水ぽすかによる大ヒット漫画。アニメ版の制作会社は『SPY×FAMILY』や『ぼっち・ざ・ろっく!』などを生んだCloverWorksで、監督は『エルフェンリート』で有名な神戸守が務めた。
放送スケジュールは2019年および2021年、2期に分かれて制作されたのだが、話数で言うと全23話。原作はコミックス全20巻のボリュームだったため、当然尺が足りておらず、物語後半が大幅に改変されることになった。
しかし、その改変内容が大不評。コミックスの7巻から13巻頃までの内容が丸々カットされ、時間軸のズレが生じてしまった。
それによって、終盤で感動的な再会を果たすはずのキャラクターが、アニメでは早々に退場している。
そして最終話では、主人公たちが世界を救うまでの経緯がダイジェストで展開されており、原作ファンを激怒させることになった。
なお汚名をこうむることを避けるためか、アニメ2期では最終回の1話前から原作者・白井の名前がクレジットから消えており、さまざまな邪推を呼んだ。
<その2>衝撃のバッドエンド『るろうに剣心』
和月伸宏の『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』も、アニメオリジナル展開の被害を受けた。
とりわけ物議を醸したのが、2001年から発売されたOVA『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 星霜編』の結末だ。
同作のテーマは、人斬りだった剣心の「贖罪」。神谷薫と結婚し、子どもを育てあげた後、薫と2人で旅に出る剣心の姿が描かれている。
徐々に弱っていく剣心の姿も相まって、ストーリーは重く暗い。
そして終盤では、剣心が重い病に感染。薫も運命を共にするため、その病に感染する。剣心が命尽きる瞬間まで描写されており、一種のバッドエンドとなっている。
「星霜編」特別版に収録されたインタビューにて、和月は同作をあくまでパラレルワールドとして受け入れたことを語っていた。
しかしその後に、自らの手で『北海道編』として原作の続きを描き始めている。
やはりOVAは和月にとっても黒歴史だったため、別の形でピリオドを打ちたくなったのだろうか…。
<その3>都市伝説と化した『HUNTER×HUNTER』
『HUNTER×HUNTER』は過去に2回アニメ化された経緯があり、とくにいわくつきと言えるのが1999年の旧作だ。
没になったとされる“幻の最終回”の存在が囁かれており、もはや都市伝説のような扱いを受けている。
当時のアニメで放送されたのは、「ヨークシン編」の中盤まで。最終回はクラピカが幻影旅団の壊滅を見届ける一方、ヒソカが「死体はフェイク」というメールを送るという、続編を期待させる内容で幕を閉じた。
だが、オークションに出品されたアニメの絵コンテが思わぬ話題に。2001年4月ごろに出品された絵コンテは、実際に放送されたバージョンと大きく内容が異なっていたのだ。
絵コンテに綴られていたのは、クラピカがクロロと死闘を繰り広げ、命を落とすという衝撃的な結末だった。
クラピカ死亡エンドを示していたのは、絵コンテだけではない。最終回とその1話前のサブタイトルは、「クモ集結×ゾル家×最終決戦の時」、「クラピカ×仲間×クモの最期」なのだが、当時のテレビ情報誌では「阿鼻×叫喚×レクイエム」「緋の目×沈黙×カタストロフ」と別のサブタイトルが記載されていた。
こうした情報から、ファンの間では何らかの事情でアニメオリジナル展開の最終回がお蔵入りになったと推測されているようだ。
あくまで憶測だが、アニメスタッフの暴走に、原作者・冨樫義博がNOを突きつけた…という構図を想像してしまう。
今や時代は大きく変わり、原作に忠実なジャンプ作品が次々と生まれている。オリジナル展開のせいで歴史の闇に消えていった漫画の作者には同情せざるを得ない。
文=野木
【画像】
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