映画『クレしん』最新作は“弱者男性”への風刺!? 名作『オトナ帝国』を超える可能性

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8月4日公開の映画『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』が、「クレヨンしんちゃん」シリーズ最高傑作になる気配を漂わせている。

映画は「クレヨンしんちゃん」劇場版最新作にして、シリーズ初の3DCGで描かれた意欲作。ある日、しんのすけの体に不思議なパワーが宿り、エスパー能力を身につけたことから物語が始まる。

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「クレしん」の劇場版といえば、毎回、さまざまな野望を持つ悪役や悪の組織でおなじみ。今回の敵は、光のエスパーであるしんのすけに対し、黒い光で暗黒エスパーとなった非理谷充(ひりやみつる)だ。

バイトが上手くいかず、推しのアイドルは結婚、さらには冤罪で警察に追われ、人生に絶望していたところで闇の力を手に入れた彼は、社会への復讐としてエスパー能力での世界滅亡を目論み、それを阻止するしんのすけと対立する。

同作が最高傑作と目されるゆえんは、そのメッセージ性にある。

行き過ぎた個人主義に警鐘?

「非正規やアイドルオタクという設定、『非リア充』をもじった名前から分かるように、敵役のモデルは弱者男性。安倍晋三元首相を射殺した山上徹也被告やジョーカー事件を起こした凶悪犯のように、無差別テロで自身の鬱憤を晴らす男を風刺しているのが明白です。

そんな彼を倒すのは、幸せな家庭で愛情に溢れ、仲間にも恵まれ、ささやかながらも成功者の典型と言っていい野原家としんのすけなのですから、この映画は『成功者VS社会的底辺』のメタファーと言っていい。映画のキャッチコピーは『この国に未来はないなんて、大人の妄想だゾ』。絶望して閉塞感を叫ぶ弱者男性・社会的底辺への強烈なアンチテーゼです」(アニメライター)

さらに感じられるのは、弱者男性の身勝手さ・有害さと、家制度や家族主義の重要性を説くメッセージだ。

「現代の若者はネットの普及や科学の発展により、これまでのどの人類よりも快適で生きやすい時代を謳歌している。さらに、学校教育で個人主義を植えつけられたことにより、集団よりも個を優先。結婚・子育てで国家の発展に寄与する意識が低い。

同映画はこうした歪んだ意識が誤っていることを指摘しており、メッセージ性では間違いなく歴代『クレしん』映画No.1。過去にすがる旧世代を痛烈に批判した2001年公開『オトナ帝国の逆襲』を越える、社会性に富んだ名作になるでしょう」(同)

子どもよりも大人が鑑賞すべき映画と言えそうだ。

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