甲子園でまた誤審! “感動の押し売り”で搾取され続ける球児たち

(C) Mike Flippo/ Shutterstock 

連日の熱戦が繰り広げられ、今年も話題を呼んだ夏の甲子園。他方で、熱中症対策や坊主問題、ビデオ判定の是非など、今大会ほど多くの改善点が叫ばれた大会もなかったのではないか。

中でもビデオ判定については、多くのファンから導入が求められている。8月21日の準決勝、仙台育英と神村学園の試合で事件は起きた。

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同点の3回、仙台育英はセーフティースクイズを仕掛け、4番・斎藤陽が三塁側へ打球を転がす。だが、ボールはサードから手早くキャッチャーに送られ、アウトを確信したサードとピッチャーはガッツポースを見せた。

しかし、判定はまさかのセーフで勝ち越しとなり、球場とお茶の間は騒然。この疑惑判定で流れを狂わされたのか、神村学園は暴投とホームランで失点を重ね、最終的に2-6で敗戦してしまった。

だがこのシーン、中継のスローリプレイでもスライディングよりタッチが早かったことは明らかで、ネット上は大荒れ。仙台育英側のボール判定が甘い場面が目立ったこともあり、プロ野球同様、ビデオ判定を導入すべきだと議論に発展した。

同様の議論は地方大会でも交わされている。甲子園出場をかけた慶応高校と横浜高校の、神奈川県大会決勝だ。

保守的な体質の高野連で改革は絶望的か…

横浜高校は最終回、ショートゴロゲッツーでピンチを乗り切ったと思われたが、審判は二塁ベースを踏んでいなかったとしてオールセーフと判定。横浜高校側は審判に説明を求めるも覆らず、これで調子が狂ったのか、逆転3ランを浴びて甲子園への切符を逃すこととなった。

しかし、映像では明らかにベースを踏んでおり、SNSは大荒れ。高校野球でのビデオ判定を求める声が一気に高まる一件となった。

甲子園準決勝での騒動も、この疑惑判定の延長線上にある。1勝、ワンプレーで将来すら左右しかねない高校野球とあって、より公正な環境が求められている。

「両判定をめぐっては審判への批判が噴出しましたが、同時に、高校野球の審判がボランティアであることから、擁護の声も多い。

報酬がなくて、責任ばかりでは審判のなり手も減ってしまうと、議論に発展しています。しかし、こうして問題が相次いでいる以上、ビデオ判定の導入や、その先にあるプロ審判の招聘は当然求められること。

高野連の資金は潤沢で、ルールさえ制定すれば、プロの審判を呼ぶハードルも高くありませんから、その気になれば来春の選抜大会から導入できるでしょう」(スポーツ紙記者)

熱中症対策に関しては、ドーム開催や日程変更など、大規模な対応を要する。坊主問題にしても、すでに根付いている風習を打破するとなると、多大な時間や労力を要するだろう。

翻って、ビデオ判定や審判問題に関しては、機材の導入やプロ審判の派遣要請など、運営側がルール策定や折衝に動けば、すぐにでも対応できる。

高校野球が「大人による感動の押しつけ」と揶揄される現状を打破するためにも、球児目線による構造的改革が急務だ。

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