チャン・イーモウ監督、ジャパンプレミアに登壇 『満江紅』制作は「フィクションを考える絶好のタイミングだった」

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『第36回東京国際映画祭』特別功労賞を受賞したチャン・イーモウ監督の最新作『満江紅(マンジャンホン)』が、東京国際映画祭のガラ・セクション部門でジャパンプレミア上映。質疑応答コーナーにチャン監督が登壇した。

今年1月中国で公開され、大ヒットした『満江紅(マンジャンホン)』は、非業の死を遂げた南宋の武将・岳飛(がくひ)が残した詩を題材に、南宋朝廷内部に入り混じる謀略を描いた壮大なスケールの歴史劇。

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チャン監督は、本作を作るきっかけについて、1992年に公開された『紅夢』をあげる。

「続編を撮影するために、6年前に中国の山西省に屋敷を建てたが、脚本がなかなか出来ずに諦めていたところ『映画を撮らないのはもったいない』と現地政府より声が上がったことから生まれた」と語り、脚本が出来上がるまでに4年の歳月を費やしたことを明かした。

質疑応答コーナーでは、監督の大ファンの女性から「どうやったらそんなに面白い映画が撮れるのか?」と質問を受け、「この映画を撮るのは難しかった」としながらも、「舞台は、閉鎖された空間の数時間の話で、いろいろなサスペンスや逆転などの要素が続きます。私は、コメディーに好奇心があり、ローカルな笑いのツボだからこそ、色々懸念もありました。しかし、今日の観客の皆さんの反応でこういうユーモラスな部分も伝わったのでは。中国で最高の役者が演じてくれました」と笑顔を見せた。

作品制作の重要なプロセスを語る

また、本作の登場人物である岳飛と奏檜(しんかい)について聞かれると、「たくさんの歴史学者が研究していますが、普通の中国の人々は岳飛は英雄で奏檜は悪い奴という認識がある。そういった庶民の視点に着目し、岳飛と奏檜を描いています」と人物像を伝えた。

続けて「岳飛の『詩』はみんなが知っている。私も小学生のころ暗記したほどです」と説明。一方、「岳飛が書いたのか?については歴史学者の間で諸説ある」と議論されていることを語り、そこが「監督としてフィクションを考える絶好のタイミングだと思った」と『満江紅』に着目した理由を語った。

ほかに作品を作るプロセスの質問には、「監督になる前は、寡黙な人だった。監督になってからは、しゃべりっぱなしです」と自身について振り返る。「脚本家グループと朝から晩まで延々と話をします。それが第1段階の重要なところ」と話し、「第2段階は、制作チーム、役者の皆さんとじっくり話します。役者にとっても大変なところですが、一番重要なところ」とポイントを2つ挙げた。

また、監督は「現場で脚本を変更できる。大きな空間を与えてもらっている」と言い「ハリウッドでは、脚本を変えようとすると許されない。セリフを変えるなら申請し許可を得なければならない」「監督をやるなら中国かな」と笑った。

最後に、「これからも東京国際映画祭に来たい。たくさんの友人と映画が見られる。また映画を携えて」とあいさつをした。降壇時には監督の元にたくさんのファンが詰めかけ、写真撮影やサインをするなどの対応を見せた。

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