野球用語に例える“野球ハラスメント”はお門違い? 若者の“若害化”が進行で日本語の慣用句すらもピンチに

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野球日本一を決めるプロ野球日本シリーズが連日の熱戦を繰り広げる中、「野球ハラスメント」なる言葉がXのトレンド入りを果たした。

コトの起こりは、日本シリーズ初日である10月28日の朝に放送された『ニッポン人の頭の中』(日本テレビ系)だ。

番組は調査会社の集計を基に、今年、X上に投稿された「◯◯ハラスメント」の数を紹介。第3位が「パワハラ」で8088件、第1位が「セクハラ」で1万3871件という順当な結果の中、なんと、第2位に1万1781件で「野球ハラスメント」がランクインした。

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番組ではさらに、若い世代への街頭インタビューで、上司からの野球ハラスメント被害談も紹介。飲み会でWBCを見ていないと言っただけで非国民扱いされた、上司から中日ドラゴンズの選手に例えられたといったほか、「最近の子はフルスイングしてくれない」「全員野球」など、何でも野球に例える野球ハラスメント被害も上がっていった。

だが待ってほしい。これらは本当にハラスメントと言えるだろうか?

比喩・慣用句すら否定する“若害”

確かに、WBCの視聴を強要したり、球団選手に例えるのは、ハラスメントと言われても仕方ないだろう。しかし、比喩表現に関しては、ビジネスのみならず、一般社会でも広く浸透しているではないか。

「自己犠牲を『バント』とか、機会のことを『打席』と表現するのは、確かに野球を知らないと分かりづらいかもしれません。しかし、対応できる部分を指す『守備範囲』とか、好みを示す『ストライクゾーン』『どストライク』といった言葉は、ビジネスや恋愛でも使われる一般的な言葉ではないでしょうか。現に、小学館の辞書『大辞泉』には、守備範囲が《自分がすべきことの範囲。また、自分ができることの範囲》と掲載されていますし、人事において『代打』『続投』との表現は定番です」(スポーツ紙記者)

他にも、ピンチからの一発逆転を「逆転ホームラン」などと表現したり、逆にピンチを救うことを「ファインプレー」と呼ぶことも一般的だろう。

最近のネットスラングでは、率直で毒のある意見を「火の玉ストレート」と表現したり、比喩表現としての野球用語は立派に受け入れられている。

こう見るとむしろ、上の世代が野球ハラスメントをしているというよりは、若い世代に一般常識がなく、ついていく気もないとしか言えないのではないか。比喩表現としての野球用語を否定するのは、慣用句という日本語表現そのものを否定することにも等しいだろう。

ネット上にも、《ピンチヒッターとかアウトセーフって野球用語だけど普通に使うよねぇ…》《「疲れて足が棒になる」とかも、いちいち棒にはならないでしょとか本気で思う人いないでしょうに》《興味ない話題されるのがハラスメントならユーチューバーとかの話題のほうがハラスメントだわ》《野球に限らんよ。オリンピックもそうだしサッカーやラグビーのワールドカップもうざい》といった意見は多い。

何でも上の世代に責任を転嫁する様は、老害ならぬ〝若害〟と言えるかもしれない。

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