“実写邦画はクソ”は本当なのか? 偽りのブームに踊らされるアニメファンたち

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ここ数年、多くのアニメーション映画が記録的な興行収入を叩き出し、実写邦画が肩身の狭い思いをしている日本の映画業界。だがここにきて、アニメ作品のヒットを作り出す〝カラクリ〟が、ようやく広く知れわたりつつあるようだ。

11月11日から全国で始まった新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』は、公開3日間で観客動員133万1081人、興行収入約18億円を突破する好調なスタートを切った。

この記録は『君の名は。』や『天気の子』といった新海監督の人気作品の中でも、歴代一位の結果で、映画の顧客満足度も高い。

今年大ヒットしたアニメ映画『劇場版 呪術廻戦 0』(公開は昨年12月24日)、『ONE PIECE FILM RED』、実写洋画の『トップガン マーヴェリック』に並んで、『すずめの戸締まり』もヒット作の仲間入りを果たすだろう。

しかし『すずめの戸締まり』といえば、公開前から上映回数が多すぎるとネット上で話題になっていた。

「『TOHOシネマズ 新宿』を例に挙げると、1日に30回以上の上映が予定されており、そのしわ寄せが他作品のスクリーン数に大きく影響しています。さらに『すずめの戸締まり』の影響により、他作品は上映スケジュールの調整も困難となっており、特典の配布や超ロングランで集客するアニメ映画に比べると圧倒的に不利な状況。文字通り、肩身の狭い思いをしているのです」(映画ライター)

これまで、アニメ映画が強いのは〝実写邦画がクソだから〟などと騒がれていたが、スクリーン独占&ロングラン上映&特典配布で、ヒット作を作れることに気がついた人も多いようだ。

アニメ映画ブームの終焉はいつ?

ネット上には映画ファンから、

《すずめの戸締まりは確かに良い作品だけど、あれだけスクリーンを独占していたらヒットするのも当たり前。もう少し他の作品にも上映数を回してほしい》
《鬼滅の刃の時もそうだったけど、その影で早々と上映回数を減らされる映画も多かった。それで実写邦画がいまいちヒットしない理由を〝クソだから〟のひと言で片づけるのはおかしいと思う》
《平日なのに昼1回しか上映されない映画は、どんなに良作でも観てもらえない。アニメ映画と比べて悪条件すぎるのよ…》

などのコメントが寄せられている。

「アニメ映画の影に埋もれていますが、実写邦画の中にも映画ファンから絶賛される作品はたくさんあります。たとえば妻夫木聡主演の映画『ある男』は、第79回ヴェネチア国際映画祭に正式出品された作品で、上映終了後には5分間のスタンディングオベーションが巻き起こりました。また、稲垣吾郎主演の映画『窓辺にて』は、第35回東京国際映画祭にてコンペティション部門の観客賞を受賞しており、高い評価を受けています。しかし『すずめの戸締まり』や 『ONE PIECE FILM RED』と比べると、そこまで大きな話題になっていないのが現状でしょう」(同・ライター)

日本映画といえば、『ドライブ・マイ・カー』が米アカデミー賞にノミネートされるなど、世界的に評価された。今後、このような作品は生まれるのだろうか。

「もちろん実写邦画界も、顔がいいだけの俳優を使った作品や、原作の人気に頼り切った作品など、粗を探せばいくらでも出てきます。しかし、それは日本映画に限らず、ハリウッド映画や韓国映画も同じ。現在はマーベル作品にも批判的な声は少なくありません。ファスト映画が流行ってしまうような現代社会において、消費者は損することを嫌い、宣伝まみれの映画しか選択肢がないのです。実際、地方の小さな映画館や、都内のミニシアターの閉館が続いていますし、今後スクリーン数を取った作品が勝つ状況は続くでしょう。『ドライブ・マイ・カー』が封切られたのは、大規模公開映画のおよそ3分の1以下である全国115館でした」(同)

作られたブームを自らが流行を作り出したと勘違いしている人が多い限り、この現状が変わることはないのかもしれない。

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