10月28日より『Amazon Prime Video』にて独占配信が始まった、特撮ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』。“マイノリティ差別”というシリアスなテーマに切り込んだ作品だが、その描写をめぐって賛否両論が巻き起こっているようだ。
※『仮面ライダーBLACK SUN』の内容に触れています
同作は1987年に放送された『仮面ライダーBLACK』を、俳優・西島秀俊、中村倫也を起用して現代に蘇らせた作品。普通は単なる悪役とされる怪人を、あえて人間に虐げられる存在として描いているのが特徴で、「仮面ライダー」シリーズでは珍しい大人向けの題材だ。
そんな同作が賛否を呼んでいるのは、「怪人」の描写が、現実社会におけるマイノリティの人々を想起させる点だ。
作中で描かれる「怪人」の多くは、バラックに住み、ゴミ拾いで生計を立てている模様。バスに乗っては差別的な乗客に「臭い」「降りろ」と罵られ、街に出ては差別主義団体のヘイトスピーチに晒されてしまう。
現実社会に存在する差別を、「怪人」に仮託して描いているとも言えるのだが、一部の視聴者からは描写が“テンプレ的”だという指摘が。また反怪人団体の描写も、いかにも風刺的であり、分断を招くのではないかと懸念されている。
『テコ朴』との類似性を感じる視聴者たち
たとえば作中に登場する反怪人団体の主導者・井垣渉は、「怪人はねぇ! 人間じゃないんですよ!」「差別は人間が人間に行うものなんですから! そもそも人間じゃない怪人に、差別なんて言葉は当てはまらないんですよ!」などとスピーチ。これは実在する団体の主張とも酷似している。
ある意味リアルな描写とも言えるのだが、逆に言えば実在の差別問題に「怪人」という皮を被せただけ…という見方もできるかもしれない。中には、差別問題を揶揄することを狙った漫画『テコンダー朴』を連想してしまう人も。
ネット上では、《出来が悪いけどかっこいいテコンダー朴として結構楽しめました》《BLACK SUNはテコンダー朴と思って見れば、まぁまぁ見れますよ》《仮面ライダー見てると思ったら実写版テコンダー朴を見終わっていた》《ガチでTHE BOYSの皮かぶったテコンダー朴だよ》《テコンダー朴の著作権切れてると思ってるのかな?》といった声が上がっている。
現実の問題をフィクションとして昇華することは難しく、その手法についてはさまざまな考え方がある。同作の場合、安倍晋三元首相を思わせる“悪役”を出したり、「自民党」と「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の関係を匂わせたりと、かなり直接的な手法だったため、反発する人が多いのかもしれない。
まだ公開されて間もない作品だが、今後世間の評判はどのように固まっていくのだろうか。
文=Tら
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