2022年下半期のアニメ業界では、相も変わらず『週刊少年ジャンプ』作品が大人気。とどまることを知らない勢いだが、それ以外にもさまざまな事件が起きていた。
今回はあらゆる角度からアニメ業界の狂騒を振り返っていこう。
『ONE PIECE FILM RED』の人気キャラが本編に
8月6日に全国公開され、興行収入180億円を突破している劇場版『ONE PIECE FILM RED』。同作は人気漫画『ONE PIECE』から派生した作品で、オリジナルキャラクター・ウタをめぐるストーリーとなっている。
これまで同作の劇場版に登場したキャラクターは、基本的に本編には登場していないのだが、ウタはかなりイレギュラーな扱い。
そもそも設定からして“シャンクスの娘”であり、フーシャ村で幼き日のルフィと親しくしていた幼なじみ。物語の原点に大きく関わっているのだ。
実際に原作の第1055話では、「新時代」の登場人物たちを示唆する流れでウタのように見えるシルエットが登場。
またアニメ第1029話でも、ルフィとウタの出会いが描かれたことが話題を呼んだ。
極めつけは、劇場版の監督・谷口悟朗がインタビューで「本編と同じ世界」と語っていたこと。
映画のキャラが“正史”になることで、《公式設定として残るのが嫌すぎる》《どうにかして今年の映画の興行収入を稼ぎたかったのかなって思うわ》と不満げな原作ファンもいるようだ。
『惑星のさみだれ』に起きた作画崩壊の危機
7月から放送された夏アニメでは、“作画崩壊”に関する話題が飛び交っていた。
最も酷評を浴びていたのが、『惑星のさみだれ』。同作はコアな漫画ファンからの評価が高く、2010年の完結以降、長年にわたってアニメ化が期待されていた作品だ。
ところが待望のアニメ化が実現したはずが、作画クオリティがあまりに不安定。
アクションシーンに違和感があるのは序の口として、「犬」がまともに描かれない珍事が発生した。
制作会社の『NAZ』は、2018年に『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(いもいも)でも作画崩壊を起こしていたことで有名だ。
“制作会社ガチャ”の大失敗として、《これが令和のアニメか…?》《さすがにこのクオリティは作者がかわいそう》と同情されている。
『リコリス・リコイル』の成功と失速
夏アニメの“覇権作品”として大ブレイクしたのが、オリジナルアニメ『リコリス・リコイル』。
平穏な日常の裏で暗躍する少女たち「リコリス」の活躍を描いた作品で、Wヒロインである錦木千束と井ノ上たきなの魅力が大ブームを呼んだ。
ところが物語の終盤では、ファンたちの期待を裏切るような展開が。元々Wヒロインの百合展開が好評だったにもかかわらず、敵の男性キャラ・真島が“間に挟まる”ような物語になったのだ。
最終話では、千束と真島の間接キスすら描かれることに。
裏切られたと感じたファンからは、《真島と間接キスしたところは絶対に許せない》などと憤る声が上がっていた。
しかし放送終了からしばらく経った12月16日、「コミックマーケット101」でウェディングドレス姿の千束とたきなが描かれた商品が発売されることが判明。まるで結婚式のような雰囲気にファンが大盛り上がりし、「ちさたき結婚」がツイッタートレンド入りした。
オタクの単純さがあらためて分かった出来事と言えるだろう。
W杯で『ブルーロック』が大ヒット
『週刊少年マガジン』で連載されており、2022年10月にはアニメの放送も始まったサッカー漫画『ブルーロック』。
元々は局所的な人気作だったが、『カタール・ワールドカップ』(W杯)の影響で世界中にブルーロック旋風を巻き起こした。
W杯で日本代表は強豪国揃いのグループEに入っていたが、まずはドイツ、そしてスペインとジャイアントキリングを達成。そのたびに海外で「BlueLock」がトレンド入りしたという。
世界各国のトレンドに、
また #BlueLock がお邪魔しています⚽️‼️世界中のエゴイストの皆さんと共に、
熱狂の中にいることが幸せです😭🔥
みんなで #FIFAワールドカップ を
応援しましょう💪
ガンバレ❗️エゴれ❗️日本‼️#サッカー日本代表#ブルーロック#エゴい pic.twitter.com/OJYlvsbj1A— サッカー漫画ブルーロック【公式】 (@BLUELOCK_WM) December 1, 2022
まるで漫画のような大活躍だったため、日本代表選手を「ブルーロック」のキャラになぞらえる風潮も誕生。浅野拓磨=凪誠士郎説、三笘薫=千切豹馬説などが生まれていた。
元々、原作はかなり尖った作風で、本田圭佑や香川真司といった元日本代表について、作中キャラが侮辱するようなシーンも描かれていた。アニメ版ではそうした描写をきれいさっぱりカットしていたことも、成功の理由だろう。
『宇崎ちゃん』主題歌の発売中止騒動
大人気アニメの第2期『宇崎ちゃんは遊びたい!ω』は、前代未聞のトラブルに巻き込まれてしまった。
主題歌『いちごいちえ Celebration』の作曲・編曲をアニソン界のヒットメーカー・田中秀和が手掛けていたのだが、10月24日に強制わいせつ未遂容疑で逮捕されてしまったのだ。
11月30日に同楽曲を収録した鹿乃/MKLNticのスプリットEP『いちごいちえ Celebration / はっぴーらいふ』が発売予定だったが、急遽発売中止に。《作品には罪がないし、他のスタッフには関係ない話なのに…》と悲しまれていた。
ちなみに田中は『アイマス』や『ウマ娘』、人気VTuberなどにも楽曲を提供していたため、多方面に迷惑がかかったことは想像に難くない。
アニメ『ヒロアカ』も逮捕が原因で…
関係者の逮捕が原因で痛手を負ってしまったのは、「宇崎ちゃんは遊びたい!ω」だけではない。
そのアニメとは、2022年10月から放送が始まった人気ジャンプアニメ『僕のヒーローアカデミア』の第6期。EDテーマ『SKETCH』を担当していたシンガーソングライター・秋山黄色が、知人女性への暴行によって逮捕されてしまった。
奇しくも逮捕が明らかとなった11月26日は、同アニメの放送日。しかも作中屈指の人気エピソード「爆豪勝己:ライジング」が放送され、特殊仕様のEDが流れる日だったのだ。
“神回”を台無しにするような最悪のタイミングに、ファンたちも《特殊ED、秋山黄色の逮捕報道のせいで台無しになってしまった》《許しがたい。何してくれたんだ》と怒りの声を上げていた。
夢物語に近いのかもしれないが、2023年は炎上がないクリアなアニメ業界が見られることを願うばかりだ。
文=大獄貴司
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